「2013年が明けてまもなく、ダイハツ工業相談役・技監の白水宏典(73)は関係者から寄せられた情報に驚いた。スズキが軽自動車の新車でガソリン1リットル当たり33キロメートルの燃費を実現しそうだというのだ。ダイハツ車の最高燃費はまだ30キロメートル。白水はすぐに大分県の主力工場へ飛び『絶対にスズキを超えろ』と開発陣に指示を出した。『無理です』という開発者に『バカ。やろうと思えばできるんだ』とにらみつけた」。
白水さん本当は「バカやろう!思えばできるんだ」と言ったのではないか?こっちの方が真に迫っているし迫力がある。
「白水から直々に指示を受けたダイハツ開発陣は8月発売の『ミラ イース』の燃費性能を33.4キロメートルまで引き上げた。なんとかスズキの軽『アルトエコ』を0.4キロメートル上回った。着目したのは排ガスの再利用だ。酸素を含まない排ガスをエンジンに戻すことでガソリンを燃焼しすぎないようにする。最も効率よく燃焼できるように冷却装置を取り付け、排ガスの温度管理までこだわった」。
「バカ野郎!」の一言で開発陣が燃え上がって無理を可能にした。こんな陳腐なやり取りで難題解決がいとも簡単にできるようなら苦労はしないと誰もが考える。記者さんはそんな程度の報告でお茶を濁していていいのだろうか。また「酸素を含まない排ガスをエンジンに戻すことでガソリンを燃焼しすぎないようにする」。という記述もこの技術開発の中身を知ろうとの読者に理解させるには無理がある。
「『スズキ超え』を果たして安堵するダイハツ技術陣。しかし白水はその先を見据える。『1台6千ドル(約58万円)、燃費はマラソンにちなみ42.195キロメートル』。白水はここを拠点に価格、燃費ともに圧倒的な優位に立てる軽をなんとしても実現させる考えだ」。
「『1部品あたり1グラム減らせ』。スズキは新日鉄住金も巻き込み、より堅くて薄い車用鋼板を使うなど薄皮をはぐような軽量化の取り組みを続ける。激しい燃費競争を繰り広げる両社だが、経済車の地位を守り抜きたいという思いは共通している」。
スズキもダイハツも最終目標を42.195㎞においておそらく5年くらいの長期的な燃費改善の技術方針を定め、それを具体化する工程表を作成し、追いつ追われつの熾烈な競争をしてきたに違いない。
その技術開発の方向性の中には当然ハイブリット化の検討も含まれていただろう。そしていくつかの選択肢を検討し、それらの中から開発スピードと開発コストを評価軸に優先順位を決め開発計画を実行してきたというわけだ。
そうした技術開発のなまなましいストーリーを明らかにしてくれることを読者は切望しているのだが、それはないものねだりということなのだろうか。
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