「衣料品通販サイト『ゾゾタウン』を運営するスタートトゥデイは31日、スマートフォン(スマホ)を使った新サービスを始める。店頭で商品のバーコードを撮影すると、インターネットで買えるようになる。店は下見だけという『ショールーミング化』への警戒が渦巻き、新サービス『WEAR(ウェア)』を巡って商業施設は対応が分かれた。
『施設内での写真撮影は原則禁止』。6月上旬のWEAR公表を受け、専門店ビルのルミネ(東京・渋谷)は入居テナントにこんな書面を送付した。WEARへの参加を見送るように暗に圧力をかけた格好だ。
警戒する最大の理由は売上高の減少。商業施設はテナントの売上高に応じた賃料などが収益源のため、ルミネの新井良亮社長は『ファッション業界が壊滅的な打撃を受ける』と反発を強める。
一方、同業のパルコは17日、参加を表明した。『どう化けるかわからない。早めに組んでおいたほうが有利だ』と理由を説明した牧山浩三社長には違う皮算用もある。
パルコの専門店ビルでWEARを使った消費者がネット経由で商品を買えば、売り上げの数%にあたる手数料をスタートトゥデイがパルコに支払う。商業施設としての売上高は減っても『パルコの実入りはほとんど変わらない』(牧山社長)」。
商業施設側に対してスタートトウデイが手数料を払うのなら売上高が減少する心配はないのではないか。また新サービスを利用しなくても、Amazonや楽天でルミネに並ぶ商品を購入できるのであれば、新サービスをことさら拒否しても大きな影響はないはずだ。むしろ消費者にとっては利便性が増えるので、たとえ「ショールーミング化」したとしても来客数の増加につながると考えれば、商業施設にとっても歓迎すべき事態ではないだろうか。
「WEAR投入の背景にはスタートトゥデイの焦りもうかがえる」。
「ネット通販大手のアマゾンジャパン(東京・目黒)や楽天の攻勢が強まっている。 アマゾン、楽天に『サービスと商品力では負けていない』と前沢社長は強調する。しかし、現実にはゾゾタウンで下見をし、商品を購入するのはアマゾンという消費者も出始めた。ゾゾタウンがショールーミングの対象となる、いわば『ゾゾルーミング化』が危機感を増幅させている」。
e-コマース間の競争軸で考えたとき、ゾゾタウンの「WEAR」はどこまで競争優位の戦略になるのだろうか。Amazonも楽天も同様のソフトを開発して消費者に提供すれば、ゾゾタウンの競争優位は一時的なものでしかない。
となると競争軸は消費者がe-コマースのサイトを訪れたときに、競合と比較してどれだけ多く購買につながるか、ひいてはどれだけ多くの顧客に来場してもらえるかの勝負になる。
こうした局面においては現時点でも熾烈な競争が繰り広げられているので、一時的に「WEAR」が競争状況に大きな波紋をひろげたとしても、競合が同様のサービスを提供するようになることで、競争状況はまたしてもふりだしに戻ることになるので、ゾゾタウンの焦りが消えることはないということになる。
焦りを消すための秘策はないか?たとえばリアル店舗からの集客を目論むのではなく、逆にゾゾタウンからリアル店舗への送客を目指すのはどうだろうか?
ファッション商品を買い求めるお客様は気に入った商品が目につくとすぐに欲しくなるものだ。早く手に入れて着こなして街に繰り出しみんなの関心を集めたい。だから一刻も早く欲しいと考える。
そんなお客様に気に入ってもらった商品が、現在どのリアル店舗に行けばすぐに入手できるかの情報を提供できれば、お客様はまっすぐそのお店に向かうに違いない。
こうなればゾゾタウンとリアル店舗およびそれを運営するファッションメーカーとのwin-winの関係になる。これをさらに突き詰めて、ゾゾタウンがリアル店舗とバーチャル店舗の在庫管理をひっくるめてファッションメーカーから請け負う道も拓けてくる。その先にはゾゾタウンがSCM全般を請け負う究極のビジネスモデルだ。
すべてのファッションメーカーに対して「ZARA」が実現している水準のSCMシステムを提供することを目指せばZOZOTOWNはe-コマースのレッドオーシャンから抜け出す道を拓くことができるはずだ。
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