「同社は1日、2014年3月期の営業利益見通しを1200億円引き下げた。通期の業績見通しの下方修正は2期連続。コミットメントをなし遂げることで、ルノー・日産連合を世界の有力自動車大手へと成長させたゴーン氏にとって経営計画の未達は深刻だ。
今回の人事では11月1日付で志賀俊之最高執行責任者(COO)を副会長に就任させCOO職を廃止した。
ゴーン氏は『懲罰ではない』と強調するが、突然の体制変更は2年連続の下方修正を余儀なくされた同氏の厳しい立場を反映したものでもある。
日産の足元の業績減速は、ゴーン氏自身が推し進めた積極投資の反動でもある。日産はブラジルなど新興国各地で新工場の建設を進めている。設備投資の増加で多額の資金が流出する一方で『リターンが少ない』(ゴーン氏)と説明する。
世界シェア8%(現6%)というコミットメントにこだわるあまり、足元では計画未達が目立ち始めた。ゴーン氏は『来期以降は新工場から収益が見込める』というが新体制下で『3度目の下方修正』は許されない」。
「コミットメント」
1999年崖っぷちに立たされた日産を再建するためにルノーから日産に送り込まれたとき、ゴーン氏は「コミットメント」というフレーズを持ち込んで「目標は必達しなければいけないし、達成できなければ責任を取るべきだ」というマインド・イノベーションを実現した。
ゴーン氏が持ち込んだ「コミットメント」は、目標はたんなる努力目標であってふつうは達成できないし、達成しなくとも責任を追及されることはないという日本企業に一般的な組織風土を一新する文化革命を引き起こした。
しかし日産が二期にわたって目標の下方修正を余儀なくされたこととこれに伴うゴーン氏の組織体制の改革の実行は、「コミットメント」による文化革命は日産においても道半ばという感をぬぐえない。
「コミットメント」が実現しなかったときどんな対応をすべきか
目標を「コミットメント」した以上それが実現できなかったときにするべきことは二つある。一つは責任を取ること。責任の取り方は退任もあるし、報酬の削減というやり方もある。もう一つは目標が達成できなかった要因をわかりやすく説明し関係者に理解を求め、計画を修正することだ。この場合目標設定の拠り所になった経営戦略のどこに瑕疵があり、それをどのように修正すべきかを明らかにしなければならない。
ゴーン氏は自らの経営責任を表明していない
今回ゴーン氏は自らの経営責任を明らかにしていない。それは取締役会の決定事項であるとして逃げている。また今回の下方修正のよって来る経営戦略の瑕疵についても説得力のある説明は行われていない。
自らの経営責任について説明がなされず、また経営戦略の瑕疵についての説明もなしに行われた組織改編やそれに伴うCOOの解任はいわゆるトカゲにしっぽ切りということになる。自分のことは棚に上げて部下の「コミットメント」には責任を求めるということだ。
上期他社は軒並み増益だった
11月2日の日経電子版によると、「日産自動車が1日発表した2013年4~9月期連結決算は、営業利益が前年同期比3%減少した。同日までに4~9月期決算発表を終えた自動車大手6社では唯一の減益だった。14年3月通期の営業利益も1200億円下方修正した。タイ、インドなど新興国販売減速の影響も大きいが、それ以上に主戦場の北米での利益減が懸念材料だ」。
他社は北米での販売増、利益増ならびに原価低減によって営業利益は前年対比で増加しているのに比べて対照的な実績だ。
こうなるとますますゴーン氏は戦略の修正点についての明快な報告をする責務がある。
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