20項目に及ぶ「日本の論点」についての問題の定義と解決策が示されている。いずれの論点についても大前氏がこれまでさまざまな形で警告を発してきたにも関わらず、一向に改善や解決の兆しがみえないことへの大前氏のいら立ちが背後に生々しく立ち上る論調で書かれているのを感じる。
そして読者もなぜこれらの論点について大前流の解決策を講じれば大きな変化が引き起こされるに違いないという思いを感じれば感じるほど現状の閉塞状況に対する絶望感を強くせざるを得ない。
ゼロベースで大きなグランドデザインを描いてその実現に向けてのイノベーションが今こそ必要だという確信に至る。
大前氏の「論点」のうち最重要と思われるいくつかについてについて考えてみよう。
論点1:アベノミクス
国境を越えてヒト、モノ、カネが自由に移動するボーダレス経済が出現して以降、ケインズ流の財政政策、金融政策は効用をすでに失った。ゆえにアベノミクスは実効を生まずに失敗せざるを得ない。
金融緩和でマネーをじゃぶじゃぶに供給してもリスクを取らない金融業は貸出を増やすことはない。銀行は日銀に国債を売却しても、売却した資金を日銀に預け入れて利ザヤを稼ぐだけで結局、資金は日銀にブーメランのごとく舞い戻る。
経済の拡大は消費の刺激に賭けるしかない。個人の金融資産は1500兆円に達する。したがってこの金融資産を取り崩し消費へと向ける政策のみが実効力を持つ。またこうすれば財政投融資でムダなバラマキをすることをやめることができて一石二鳥につながる。
論点2:消費税増税
増税も個人や企業の支出を減らし、政府の支出を増加させる。企業や個人の支出増加だけが経済の拡大につながるわけだから、これ以上政府の支出を増やすことは政治家や官僚の裁量による無駄遣いを増やすだけだ。
そもそも消費税は直接税から間接税への転換という税制改革が目的であったことを思えば、消費税増税とともに所得税や法人税の減税をセットで組み込まなければ筋が通らない。
論点3:道州制
道州制によって織田信長以来この国に根ずく中央集権官僚制の統治構造を大変革し、道州が相互に切磋琢磨しあって自律的に豊かな社会づくりに知恵を出す統治構造への転換が叫ばれて久しいが、これも一向に進まない。
変化の兆しは橋本大阪市長の大阪都構想だ。橋本氏は国政に軸足を移したことで大阪都構想も新店の勢いを失っている。しかし都構想は道州制革命への大いなる突破口、一つのプロセスとして推奨に値する。
大阪は豊臣秀吉の時代からの商都。大阪都への転換とともに海外から人や企業を積極的に呼び込んで商都大阪を世界的な商業都市に押し上げることで、地方都市が無策な政府になり代わって経済成長のけん引役になることを実証できれば、道州制への転換に向かって世論は大きく動き始めるに違いない。
論点4:原子力発電所再稼働
福島原発事故の原因究明はいまだに十分になされたとは言い難い。大前氏によれば福島原発事故の究極の原因は、「電源と冷却設備の多重性と多様性の欠如」に求められる。
大前氏はこの原因究明をほぼ個人の力で行った。政府が本来実行しなければならないのにいまだに実現できていない。政府に手で原因が究明されていない以上、再発防止の対策は政府の手でなされるはずもない。従って原発の再稼働はいまだもって絶望的であり、その見通しも立たないのだ。
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Elly Galicia (金曜日, 03 2月 2017 11:57)
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