書評 : 長谷川慶太郎「大局を読む」(徳間書店刊)

目新しい情報は以下のことに尽きる。

1.  メタンハイドレードが日本近海に豊富に埋蔵されている。一説によれば日本の天然ガス需要の130年分をまかなうほどの量と言うことになる。そしてその掘削技術の開発が進んで実用化も間近い。三井海洋開発がその技術開発で一歩先を行っている。三井造船が親会社だ。三井造船と川崎重工の経営統合は破談になったが、この文脈から行くと川崎重工は大きな成長の芽を摘み取られたということになる。三井造船は依然として造船業界の再編成の目玉になる。

2.  中国の習近平体制の確立は中国解放軍を掌握できるか否かに負うところが大きい。薄煕来を失脚させたのも解放軍との連携を絶ち、解放軍に脅威を抱かせることが大きな狙いであった。

3.  中国のシャドウバンキングの経営は中国解放軍の幹部による出資によって行われている。したがって習近平は中国解放軍を支配下に掌握するために、シャドウバンキングの壊滅を志向している。したがって中国の不動産バブルの崩壊にあたって、大きな経済的な混乱があってもシャドウバンキングを支援せずこれが崩壊するがままに放置すると考えられる。それまでしても解放軍幹部を完全掌握することが習近平にとっては政権の確立のために不可欠なのだ。そして926日にその運命のときが来ると長谷川は大胆にも予言した。しかし長谷川のこの予言は見事に外れた。シャドウバンキングの借入金の借り換えは三か月ごとに行われる。この文脈で行けばつぎの危機は12月末に到来する。

 

長谷川氏は中国崩壊が近未来に起きると考えている。それが上記に見た北京政府と中国解放軍との権力闘争だ。二つの権力はいずれ根本的な矛盾にまで発展し大規模な内戦が生じて中華人民共和国は崩壊するというのがその見通しだ。

しかしこれは予測というよりは長谷川氏の願望そのものにすぎない。なぜなら長谷川氏の考えるほど中国共産党の権力はやわではない。党の権力基盤は全国津々浦々に張り巡らされていて、その浸透度は極めて深くしかも強固だ。党員の既得権益は大きく従ってこれを享受するパワーは強力だ。

また都市住民の格差農村住民に対する子弟の教育、社会保障などに関する格差は大きく、都市住民の既得権を守ろうとする共同医師は強固で、これも共産党政治を保守するパワーの源泉になっている。

中国は大きな内部矛盾を抱えながらも、危機に直面するごとに打開策を打ち続けて延命する。だから短期的には崩壊の危機はやってこないが、都市と農村の格差、そして党員と非党員との格差、さらには国営企業と民営企業との格差が継続的に拡大を続ければ、いずれは破断の時期を迎えざるを得ないことは確かだ。