日経新聞記事からの気付き:「中国、市場重視で改革」

 「中国共産党の重要会議である中央委員会第3回全体会議(3中全会)は12日、経済の持続的な安定成長に向け、市場の役割を重視する改革を進めるとの基本方針を決め、閉幕した。金融や投資の規制緩和を進める一方で、国有企業中心の体制は維持。社会統制の強化へ『国家安全委員会』を新設する。経済改革と社会安定の 両立をめざし、2020年までに改革の成果を示すとした。

決定では『経済体制改革の全面的な深化に重点を置く』と強調した。そのうえで『経済資源の配分で市場に決定的な役割を果たさせる』とした。中国では政府がエネルギー価格を統制しているほか、銀行融資も大手国有企業に偏っている。市場を通じた価格決定や金利の自由化などを進めるとみられる。

 とはいえ、民営企業の育成に配慮する一方で、『国有企業を中心とする』との従来方針を変えていない。胡錦濤前指導部が最初に開いた03年の3中全会でも国有企業改革などを訴えたが、官僚らの抵抗で実行が伴わず、『失われた10年』との失望感が広がった。

 中国では地方政府がわずかな補償で農民の土地を収用し、高値で転売する手法が横行。投資に過度に頼る成長モデルを助長し、格差拡大や住宅価格の高騰、地方債務の膨張を生んだ。今回の決定には農民の財産権保護なども盛られたが、改革の実現はなお不透明だ」。

 

国有企業中心の体制をそのままにして市場重視はありえない

 

製造業に限っての話だが、中国の国営企業は製造業総就労者の70%を雇用していながら、その生産額は製造業総生産額の20%にしか過ぎない。こうした国営企業は利益をあげて株価を上げることをめざすより、ひたすら規模の拡大と利権の維持拡大を目指して経営がなされている。

国営企業中心の経済体制においては、市場での需給の変動によって生産調整がなされることはないので、ひたすら過剰生産が付きまとうことになる。こうした企業行動が経営幹部や従業員、さらには監督側の共産党員や官僚の利権の維持拡大につながるのだ。

上場企業といえども株式は政府が70%保持し、市場には30%程度しか公開されていないので、市場による企業の監視はなされようもない。したって国営企業の経営は政府や共産党の指導下におかれる。株式公開の目的は企業幹部や共産党幹部さらには高級官僚の株式を活用しての錬金術を可能にするということに重きが置かれることになる。

 

改革はなされず「社会主義『市場経済』」のまま

 

こうした国営企業を依然として経済の中心に据えるということは、市場による生産調整や価格決定は望むべくもない。そもそも国営企業中心であり続ける限り「市場経済」は機能不全のままに取り残されるほかはないということだ。つまりは「社会主義市場経済」は「社会主義『市場経済』」であり続けるということになる。

李克強をはじめとする改革派はおそらく、「『社会主義』市場経済」への転換を目指そうとしたが、それは既得権保護を目指す現状維持派や毛沢東主義派の猛烈な抵抗にあって、大きな妥協を強いられ、体制の現状維持が確認されることになったのであろう。

「経済資源の配分で市場に決定的な役割を果たさせる」という報告が空々しく響く。

 

格差は依然として拡大を続ける

 

国営企業中心の経済体制は共産党員と非党員との格差、国営企業の従業員と民間企業の従業員の格差の拡大を生み続けることになる。

そして都市と農村の格差も改革の方向性は示されずぞのままに据え置かれる。格差の拡大は社会不安の拡大につながる。社会不安の拡大が体制不安につながらないように社会に対する監視と統制が強化されることになる。「国家安全委員会」の設立の狙いがここにある。

中国はかくして強大な権力による恐怖政治の色合いを徐々に強められていくことになる。しかし強権の方向は、権力者の意に反して皮肉にも権力基盤の劣化の速度を上げることにほかならない。