「国民一人ひとりに番号を振り、税の徴収や社会保障給付に役立てる共通番号(マイナンバー)の通知まであと2年を切った。自治体や企業の準備作業は膨大で、導入に向けた動きも鈍い。対応のためにシステム開発業界では2兆円超の特需が発生するともいわれるが、直前に仕事が集中してシステムエンジニア(SE)が不足する『2015年問題』を懸念する声が早くも上がっている。
マイナンバーは政府が構築する『情報提供ネットワークシステム』を核に、都道府県や市区町村、健康保険組合など、8000近い機関の情報システムがつながる。さらに企業も連係するため、国を挙げてのシステム整備が必要。かつてすべてのコンピューターの改修を迫られた『2000年問題』に次ぐ大作業になる。大和証券の上野真シニアアナリストの試算では、関連のIT投資は2兆6000億円に上る。
特需に期待が膨らむIT業界だが、同時に懸念も高まりつつある。情報システムの構築や改修を手掛けるSEの不足だ。
対応できるSEは国内で80万人程度といわれる。上野氏はマイナンバー導入に向けた開発業務の集中で『自治体向けだけでも7万~8万人が不足する』と指摘する。
番号制度を巡っては個人情報が漏洩することへの懸念が国民には根強い。このため番号利用は社会保障と税、防災分野に限っており、民間や医療などへの利用拡大は2018年をめどに検討することになっている」。
2兆6000億円もつぎ込むなんて狂気の沙汰だ
マイナンバーを活用するためのシステム構築は、都道府県や市区町村ごとにそれぞれ個別に開発に取り組まなければならないということはない。都道府県レベルで考えて見てもシステムはほとんど共通のはずだ。だから共通システムを都道府県が共同開発すれば少なくとも都道府県のレイヤーでひとつ開発すればいいことになる。
開発した共通システムを各都道府県の既存のシステムに組み込む、あるいは繋ぎこむためのシステム変更を各都道府県が行えば済んでしまうはずだ。同様に市区町村のレイヤーでも、開発すべき機能はまったく同一だから共同開発すればいい。
共通システムにしないと信じられないくらいのムダが生じることになる。
3000億円くらいで何とかなるのではないか
こう考えると開発費と開発に要する工数そして期間は現在個別に開発するという前提での見積もりに比べて、おそらく十分の一で済んでしまうはずだ。
例えば44都道府県での開発費は一つの都道府県で共通システム構築に750億円程度、個別開発に一つの都道府県ごとに15億円程度で済んでしまう。の頃に1500億円で市区町村のシステム開発はまかなえるはずだ。
何のためのマイナンバーか
マイナンバーは市民の便宜度を向上することが第一の目的だ。続いて政府や地方自治体の職員の生産性を向上すること。第三に税や社会保険料の収得の網羅性を完ぺきにすることだ。
システム開発に際してこうした目的の優先順位をよくよく考えて設計する必要がある。地方自治体で開発をバラバラに行うとこの辺の判断が不十分になることが考えられる。結果として市民サービスの水準にばらつきが生じたり、職員の生産性にばらつきが生じたりする。共通システムにすることでばらつきはなくなり、目的実現のために知恵が徹底的に絞られることでシステムの品質水準も飛躍的に向上することが期待される。
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