堀江貴文著「ゼロ」(ダイヤモンド社刊)

「誰もが最初は『ゼロ』からスタートする。失敗してもセロに戻るだけだ。決してマイナスにはならない。だから、一歩を踏み出すことを恐れず、前へ進もう」

 

何か新しいことを始めるとき、置かれた位置はゼロ。誰もがゼロから始めるしかない。ゼロからの出発だから1を積みあげていかないかぎり成果は望めない。「5×525のような掛け算のショートカット」は効かない。ゼロに何をかけてもゼロだから。

19ヶ月の懲役生活を終えて再びゼロからのスタート台に立ったホリエモンが改めて実感したのは、このゼロから1を積み上げるしかないという事実だった。

地道に1を積み上げていくしかない。濡れ手で粟のようなうまい話はそもそもない。挑戦する意思を固めたらひたすら1を積み上げる努力を繰り返して成功を勝ち取る。こえがホリエモンの人生哲学だ。

地道にだとか、努力だとか意外な言葉が語られるのに思わず驚いてしまう。ほとんどの日本人がホリエモンのことを曲解していたということになる。こんなに素直で涙もろい奴だったとはだれもがにわかには信じがたいと思うだろう。

ホリエモンにとって「働く」ことは生きることそのものだ。人に与えられたもっとも貴重な資源は時間だ。しかも時間は誰にとっても平等に与えられている。その意味で人は皆平等だ。この貴重な資源をいかに大事に活かしていくかこそ、いかに良く生きるかということにほかならない。そして働くということはこの貴重な時間を最も有効に活用することなのだ。

ホリエモンのいう「働く」には「考える」ことが表裏一体になっている。どうすればもっとお客様に喜んでもらえるか。どうすれば働く仲間に楽をしてもらえるか。どうすればもっと楽しい仕事になるか。働き始めると次々に考えなければいけない問題が生じてくる。そして考えること自体が楽しいことだし、さらには考え抜いて素晴らしい解決策が導き出されれば限りない喜びが湧いてくる。考えることを伴わない働きは本当の働きではない。それは「労働」であって、時間を切り売りしているに過ぎない。

「働く」ことで人はポジティブになれる。さらに「働く」ことで世の中が少しでも楽しくなることに貢献するなら、働くことはなんと大きな幸せを人にもたらしてくれるだろうか。

ホリエモンは起業して10年間で常人の及びもつかない圧倒的な仕事量を積み上げてきた。ゼロから1を積み上げるというやり方では到底成し遂げられないところへとかけ上って行った。だからここに書かれたホリエモンの哲学はあまりにも常識的で、思わず「なんだ、そんなことか」と言ってしまいたくなるはずだ。こんな陳腐な考えでどうして大きな成果をつかむことができたのか。そんな疑問が付きまとう。

ホリエモンが普通の人と違うところがあるとしたら、夢中になると寝食を忘れるくらい没頭してしまうことだ。その我を忘れるほどに夢中になるほどの夢中になるなり方が常人をはるかに超えていたという、これもまた陳腐な結論に至ることになる。

いずれにしても起業を考えるすべてに人に読んでもらいたい佳作だ。