シェール革命でアメリカは2030年代には原油の輸入が不要となるという。しかしそれでも世界の原油価格は70ドルから80ドルで高止まりすると予想されている。
「深い地中の岩盤層からシェールオイルを取り出すには、従来の石油開発と比べてコストがかかる。採算が確保できる水準で取引されることが必要だ。割安なシェールガスと異なり、その分岐点が70~80ドルなのだ」。(日本経済新聞朝刊2014.1.24)
ということは、原油価格は化石燃料の枯渇による価格高騰の危機はなくなったものの、価格の低下は期待できないということになる。
「シェールオイルの増産は原油高騰を抑え、太陽光や水素など石油代替エネルギーへのシフトを防ぎ『石油の時代』に延命をもたらす。一方で、その開発コストの高さから『長期的には原油価格は下がりにくい』とJX日鉱日石エネルギーの辰馬仁海外調達部長は見る」(同)。
要求が増加すれば当然価格は下がるはず。シェールガスの掘削コストが高くてそれを価格に転嫁せざるをえなければ、価格競争で原油に負け供給が増えないことになるはずがそうはならないというのだ。
価格メカニズムが簡単に貫徹しない要因があるようだ。一つは中東産油国の財政事情。
「サウジは最低賃金の引き上げや失業対策、住宅整備などの公共事業に10兆円規模を投じた。バーレーンやオマーンなど資金力のない近隣国も支えた。その結果、歳出が急速に膨らんだ。
歳入の大半を原油収入でまかなっているため、歳出が増えると財政を均衡させるために、原油価格の高値維持が必要になる。サウジの場合、財政均衡に必要な原油価格の水準は、08年に1バレル30ドル台だったのが14年は同80ドル超に跳ね上がった」。(同)
何のことはない。中東産油国とアメリカのバーチャルなカルテル行為が原油価格の下げ止まりを招いているということだ。
原油価格が下げ止まるもう一つの要因は、新興国の経済発展による資源需要の拡大だ。新興国の経済性成長が原油需要を底堅いものにして、先ほどのバーチャルなカルテル行為を絶妙なバランスで許容することになっているわけだ。
しかしこの絶妙なバランスもそう長くは続かないはずだ。アメリカ以外の地域でのシェールガスの採掘も今後一層進むだろうし、採掘コストも技術革新で徐々に下がる。となれば長期的に現状維持の筈はない。需給の均衡が崩れる時が来るのにそう長い時間は必要ない。
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