日経新聞経済教室からの気付き:吉川洋東京大学教授「需要創出型の技術革新を」

 

先進国の経済成長を制約するのは「既存のモノやサービスの需要は必ず飽和する」という広義のエンゲルの法則にほかならない。需要の飽和を乗り越え、19世紀以来200年間、先進国が成長を続けてきたのは常に新しいモノやサービスが生み出されてきたからだ。それこそがプロダクト・イノベーションであり、経済成長の源泉なのである」。

 

プロダクト・イノベーションによる新しい価値提案こそ新規の需要を創造し、企業成長の、ひいては経済成長の強力なドライバーになる。まさにシュンペーターが説いた通りだ。

 

大事なのはプロダクト・イノベーションを継続的に創発していくことだ。なぜならプロダクト・イノベーションによって生まれた新しいサービスやモノの需要も時間の経過とともに必ず飽和するからだ。製品のライフサイクル仮説は成長過程に続いて成熟過程が必ず訪れることを解いている。

 

しかも成長過程には次々と供給者が現れ、そのことが成熟期に大幅な供給過剰に陥ることにつながる。必然的に利潤率も傾向的に低下する。

 

だからこそ継続的なプロダクト・イノベーションの連鎖が必要なのだ。そしt先進国こそがプロダクト・イノベーションの発生の場になる。

 

「新しいモノやサービスを生み出す市場は先進国である。したがってプロダクト・イノベーションを担う先進国の企業にとっては、目の前にある自国市場こそがいまだ見えない「可能性の宝庫」なのだ。ものづくりの現場がコストの安いアジアなどに流出するのは自然なトレンドだが、新たな財・サービスの創出は先進国の市場から始まる」。

 

にもかかわらず日本はこれまでプロセス・イノベーションに経営資源を集中してきた。長引く需要の飽和状態にあって継続する激烈な価格競争のなかで、なんとかコストダウンによって生き延びるしかない状況が続いてきた。これこそが長引くデフレの真因だったのだ。

 

「人口が減少していく日本では1人当たり所得の2%成長は決して不可能な数字ではない。年率2%成長は35年で2倍を意味する。したがって現在30歳の人の生涯所得は団塊の世代の2倍を上回るだろう。それだけの購買力を持つ人々が豊かさを実感できるモノやサービスはどのようなものなのか。それを見つけ出すのが企業の役割である」。

 

今こそコストダウンを追求するプロセス・イノベーションからプロダクト・イノベーションへを主導するための、企業戦略の大転換が必要とされているのだ。