日経新聞が興味深い論調を披歴した。
「バブルの足音か、財政再建への追い風か――。日本、米国、ドイツで名目の経済成長率がそろって長期金利を上回った。景気回復の勢いに比べて長期金利が低すぎる状態で、過去の似た局面では資産バブルにつながった例が目立つ。財政再建には追い風だが、バブルが起こる前に安定成長に軟着陸できるのか。日米欧の金融政策は微妙な局面を迎えている」。(日経新聞2014.5.26朝刊)
日銀の金融緩和が、金利低下→円安→株価上昇→景気回復・デフレ脱却のプロセスを推進している、と手放しで政府・日銀の金融政策を評価してきた日経新聞が、金融緩和の先にバブルが控えているかもしれないと言い出した。
「経済協力開発機構(OECD)によると、米国とドイツは2010年、日本は13年から名目の国内総生産(GDP)成長率が長期金利(10年物国債利回り)を上回った。1980年以降ほとんどの年で名目成長率が長期金利を下回っており、2つの水準が逆転するのは異例」。(同)
日銀の異次元の金融緩和は長期国債の利回りを低下→円安→株高を実現しただけで、景気回復やデフレ脱却に対する効果はほとんど確認できていない。
円安によって一部の輸出産業に属する企業と株高によって含み益を得た資産家が収益を拡大したが、それも一年を経過して収益の今後の伸びしろは行き止まりの状態だ。
金融緩和によって期待された企業の投資行動は新規投資や更新投資には向かわず、海外企業のM&Aや自社株買いに向いている。経済成長の推進力としてはまるで期待できない状況だ。
だぶついた資金は資産購入に向かい着々とバブルを準備するほかはない。
「成長率と長期金利が逆転すると何が起きるのか。長期金利がお金を借りるコスト、名目成長率が資産の値上がり率だと単純化して考えると分かりやすい。お金を借りて資産を買えば『資産を持っているだけでもうかるぬれ手で粟(あわ)の状態』(慶大の櫻川昌哉教授)になる。値上がり期待から収益性の低い資産にもお金が流れ、バブルにつながりやすくなる」。(同)
日経新聞がこうした論調を示すほどに金融緩和の負のインパクトが蓄積されつつあるということだ。しかも金利低下が米、独、日の主要先進国で実現しているということは、バブルの傾向がグローバルの規模で進行していると理解するべきだ。
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