成城石井がローソンに買収された。成城石井の買収を巡っては三越伊勢丹HDやイオンも名乗りを上げた。
結局550億円の金額を提示したローソンがこの競売に競り勝った。
ローソンの成城石井買収の意図を日経新聞はこう伝えている。
「『(成城石井は)スーパーではなく、当社の目指す小商圏型の製造小売業に近い』。買収発表後の30日夕方、アナリストとの電話会議でローソンの吉武豊最高財務責任者(CFO)は成城石井の魅力をこう強調した。
成城石井は全商品の4割を製造段階から関わる独自商品が占め、粗利益率は40%弱に達する。一般的なスーパーは20%台で、足元の業績が好調のヤオコー、マルエツの30%強と比べても突出している。売上高営業利益率6%超(2013年12月期)の高収益力は、かねて小売業界で注目の的だった」。(日経新聞2014.10.1付朝刊)
この記事についてはいくつかの疑問が湧く。
疑問その一は成城石井が小商圏型の製造小売業に近いということについてだ。そもそもコンビニエンス業の主力商品はおにぎり、弁当、総菜、おでん、パンなどだが、これらの商品にナショナルブランドの大手メーカーの商材はない。
ほとんどが専属の企業に製造を委託している。もちろん商品企画の主導権をコンビニエンスの本部が握っている。したがってコンビニエンス業態そのものがその主力商品を製造小売り業態で調達していることになる。
成城石井にしても製造小売り業態での調達は総菜や弁当に限られているので、ローソンの調達プロセスに比べて成城石井のプロセスが並はずれて優れているとは考えられない。
つまりこの領域でローソンが成城石井から学ぶべきことがどれほどあるかに疑問が湧くわけだ。仮にローソンがそれを渇望しているとすればローソンの調達プロセスにはセブンイレブンとの比較で競争上の大きな弱点をはらんでいるということになる。
疑問その二は成城石井の売上高利益率が6%超で、それが高収益力だという評価についてである。
成城石井の粗利率は40%で、他の食品スーパーの30%に比して10ポイント高くなっているという。とすると成城石井の売上高営業利益率は固定費比率が同一なら10%を超えていてもおかしくない。
またローソンの店舗粗利率は推計で40%を超えていると思われるから、この面からきても成城石井の収益はけして高収益とは言えない。
要するに成城石井の業態をスーパーマーケットとみると、スーパー業界の中では高収益に見える。しかし成城石井をコンビニエンス業態の亜種と考えるとその収益率は決して高くはないということになる。
この点からもローソンが成城石井から学ぶべき点は多くはないと考えざるを得ない。仮に学ぶべき点があるとしたらローソンの収益構造の低さそのものが問題を抱えているということになる。
果たしてローソンは成城石井を買収してどのようなシナジー効果を得ようとしているのか玉塚新社長の采配が見ものだ。
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