サントリーHDの社長に新浪氏が就任した。
伝統的なファミリー企業の社長にまったくの外様が就任したことで大きな注目を集めている。
新浪社長がサントリー王国の統治を成功に導く上で大事な心得は三つある。
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佐治会長の影響力の制御
佐治会長の影響力はきわめて大きい。とすると二頭政治の危険性が高い。もちろん佐治会長自らその危険性を十分認識して最大限の自制をするだろう。
しかし当面は佐治ボスの采配のもとで行動してきたサントリー役員社員の行動習慣はこの大変化に即時対応できるわけではない。役員社員は佐治会長がどう考えるかを気にし、つい指示を仰ぎたくなる。
このとき新浪氏が佐治会長に対して自分の頭越しに役員社員に指示することを断固として阻止しなければならない。
二頭政治は役員社員に何が重要なのかについての認識に混乱をもたらす。そしてこれが長期化すると役員社員は二頭政治を理由に行動を回避するようになる。かくして企業風土が荒廃する。従って二頭政治は企業の死に至る病だ。
もし佐治会長が一度でも新浪氏の頭越しに役員社員に指示したり意見を開陳するようなことがあれば、新浪氏のリーダーシップは大きく毀損されてしまうことになるばかりかサントリーの死につながりかねない。
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流通業から製造業へのマインド転換
新浪氏は20年近くコンビニエンス業という流通業でももっとも環境変化の激しい業界に身を置いてきた。これに替わって新天地は製造業だ。
流通業では週次で棚にある商品が入れ替わる。週次の流通業に対して製造業の時間軸は商品開発を例にとると年単位になる。
サントリーの高級ウイスキーは仕込んでから倉出しするまで数年あるいは10年単位の歳月が必要になる。サントリーは製造業の中でもとりわけ長い時間軸で絵動いている。
つまり時間感覚が大きく変わる。この時間感覚の変化に基づくビジネスマインドの転換が必要になるということだ。
しかし短サイクルのマインドを全否定するのではなく、長短の時間間隔を同時に使い分けるハイブリッド的なマインドが生まれてくることが望まれていると考えるべきだ。
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有能な補佐役の外部登用
単身異郷に乗り込んで孤立しては思うような結果は残せない。有能な補佐役が必要になる。補佐役とのチームワークが新浪氏の情報収集力と知力を大きく拡充する。
それもサントリーの企業文化を客観的に見ることの出えきる外部人事を抜擢することが望ましい。
補佐役の役どころは戦略および人事だ。少なくともこのふたつの領域でのプロ人材が補佐役として新浪氏を支える必要がある。
以上の三つの心得を確実に実行することができれば新浪氏の采配は大きな成果を生むに違いない。
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