これまで店舗で実物を見てから購買するのがあたりまえだった家具の販売にITを活用したイノベーションが起きる。
「無印良品を展開する良品計画など家具を扱う十数社が、スマートフォン(スマホ)で自宅にいながら家具の配置を疑似体験できるサービスを始める。現実の映像にコンピューター画像(CG)を重ねる「AR」(拡張現実)技術を活用する。ライバル関係にある有力企業の家具を自由に組み合わせて選び、購入できるのが特徴だ。インターネット通販市場の拡大に弾みがつきそうだ」。(日経新聞2015.1.13朝刊)
疑似体験の仕組みはこうだ。
「消費者は無料のアプリと、CGを配置する場所を示す紙の目印を併用する。まずスマホへアプリを取り込み、家具のブランドと商品を選択。室内で家具を配置したい場所に、紙の目印を置いておき、スマホをかざす。
画面内にはスマホのカメラで撮影している室内の映像に、家具の3次元(3D)CGが重なって映る。アプリには家具のサイズデータが入っており、スマホと目印の距離の情報をもとに、画面上に適切な大きさで家具を映し出す。消費者は各社の商品を順次、画面に映して部屋に合う商品を探したり、複数メーカーの家具を組み合わせたレイアウトを試したりできる」。(同)
国内家具市場に占めるネット通販の比率は10%程度に過ぎない。現物を見ないで購入することに消費者は抵抗感を持っているからだ。この仕組みはこの抵抗感の壁を崩すことにつながる。
しかし家具はかさばるので店舗に陳列される対象がきわめて少数に限られてしまうという実態がある。現物を見ないと購入できないという消費者の事情は、同時に多様な選択肢を見ることができないという不満足感を伴うものであった。
IT活用で自宅に居ながらにして家具の使い勝手や自宅の雰囲気との整合性を疑似体験できるようになったことで、消費者は現物を見ることと、多様な選択肢を持つという二重の自由を手に入れることになったわけだ。
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