米国の金融緩和政策が終焉して、出口戦略が模索されることで米国金利が上昇している。
これに引き換え、日本に続いて欧州が金融緩和政策を開始することになり、ドルだけが強くなる状況が確実だ。
長期的に継続すると予測されるドル高が米国企業の業績に対する懸念材料として捉えられ、米国の株価が急落している。
このような状況を前提にして日経新聞は「ドル高、米企業に打撃」(2015.3.13朝刊)という記事を掲載している。
「強いドルが米グローバル企業の収益を押し下げる傾向が強まりつつある。ドル高は国外からのドル建て収入の目減りにつながるほか、日本など海外のライバル企業の価格競争力を高める面もある。主要企業の業績は2015年1~3月期に減益に転じ、4~6月期も減益になる可能性が出てきた。」。
「トムソン・ロイターがまとめた市場予想によると、米主要500社の15年1~3月期の1株当たり利益(EPS)はドル高などが響き前年同期比2.7%減になる。実際に減益になれば、09年7~9月期以来。同4~6月期も同0.1%減になるとしている」。
「米主要企業の中でもハイテク分野は海外売上高比率が50%を超える企業が多く、ドル高の影響が大きい。世界中で新型iPhone(アイフォーン)の販売が好調なアップルは『言うまでもなくドル高の悪い影響を受ける』(同社)。アマゾン・ドット・コムも売り上げの4割超を海外に依存している」。
「ドル高はドル換算で海外収益が目減りするだけでなく、日本や欧州勢といった海外の競合企業との競争条件が不利になる。消費財のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やジョンソン・エンド・ジョンソン、マクドナルドやコカ・コーラなどグローバル企業には軒並み逆風だ」。
「米主要企業で海外売上高を開示している企業でみた海外売上高比率は約30%。地域別業績を開示しているおよそ240社に限ると海外売上高比率は46%に高まる」。
日本が異次元の金融緩和による円安局面に入った時に、円安による輸出増加が期待されたが、輸出は一向に伸びる気配はなく、円安⇒輸出増加⇒明槓設備投資の増加⇒景気回復のシナリオは機能しなかった。
この裏には円高時代に日本企業が生産基地を海外に展開し、為替動向によって業績が左右されない経営構造を形成したという実態があった。このことが円安⇒輸出増加というシナリオが得絵に描いた餅になった最大の要因であった。
むしろ円安による輸入原材料の価格の上昇は、企業業績のマイナス要因になり、円安による輸出増を帳消しにすることになった。
さらには円安によるエネルギー価格の上昇、輸入消費財の価格上昇は消費者の購買意欲の減退につながり、企業にとってはマーケットの縮小による売上高の減少と言う負の影響を受けることになった。
このように見てくるとグローバル化した環境にあって、為替変動は企業業績にプラスとマイナスの影響を与えるという意味で、業績に中立的に働き、これまでの常識が通用しない環境になったと見るべきである。
米国企業は経営のグローバル化という状況においては、日本の20年先を進んでいると見るべきだ。米国企業の海外売上比率が30%に達するという事実はこのことを良く物語っている。
とすればドル高は米国企業にとって打撃ではなく、好循環を招く引き金にもなるはずだ。
さらにドル高は海外からの輸入原材料や消費財の価格を押し下げ、米国内の民間消費支出の増加にプラスの影響を及ぼし、これが企業の売上高の拡大につながり、景気回復の牽引力にもなるはずだ。
米国の民間消費支出の拡大は世界市場からの輸入によって支えられることから、米国の消費拡大はグローバル経済にも良い影響を与えることになるにちがいない。
直近の米国株価の急落は、上昇と下落を繰り返して、往復で利益を狙うマネー・ゲームのプレイヤーたちの仕掛けた一時的な現象と見ることができる。
米国経済は今後回復基調を持続し、したがってドル高と米国株式の株高は長期化すると見るべきだ。
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