ソニーがアメリカでプレイステーションにテレビを配信するサービスを開始した。
「ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)はクラウド型テレビ配信サービス「プレイステーションヴュー(PS Vue)」を米国で始めた。PSを活用した新しい視聴体験を提案し、ケーブルテレビ市場に切り込む。PS Vueは商品・サービスの売り切りモデルから脱却し、ソニーの新たな成長モデルになるか、ソニー復活のカギを握っている」。(日経新聞2015.3.24朝刊)
「PS Vueはネット経由でスポーツや映画などテレビ番組をゲーム機「PS4」「PS3」に配信するサービス。当初、CBSやFOXなど大手・地方放送局が85番組以上を提供する。ゲーム機のコントローラーを使い、視聴したい番組を快適に探せるのも売りだ」。
ソニーの狙いは何か。それは新たなライフスタイルを提案することにつながるのか。
第一の狙いは、「米国で身近なケーブルTVのサービスを刷新し、視聴者の乗り換えだ」。
第二の狙いは、ケーブルテレビの再定義だ。「全ての番組を3日分、過去にさかのぼって視聴できるほか、クラウド上に登録した番組も28日間保存できる」。
第三の狙いは、「継続的に顧客とつながることで新たな収益を稼ぐ事業モデル構築への挑戦」だ。
「課金情報など入手した顧客データから使い方や好みなどユーザーの属性を分析。ニーズの変化を読み取り、映画や音楽配信のほか、ハードでも新製品の開発に生かす」。
TVのネット配信のサービスはソニーのほかに、アップル、アマゾンなどが展開し始めている。グーグルも早晩androidにTV受信の機能を標準装備することになるだろう。
となるとソニーのサービスが競争優位を獲得するためには、単にテレビに流れるコンテンツをプレステで視聴できるという以上の新価値を提案しなければならない。つまりスマホでできること以上の体験がプレステで可能になって初めて、ソニーの競争優位が確定することになるのだ。
しかしそのイノベーションについて明確な姿はまだ見えていない。
ところでプレステなりスマホでテレビが視聴できということは、当然その画像を大画面に映し出して視聴する機能が伴うことになるはずだ。しかもコンテンツの配信や録画機能はクラウドによって実現され、従来のテレビが備えていた受信機能は不要になる。さらには録画機も必要なくなる。
その時テレビはもはや単なるスクリーンン機能、つまりモニター機能だけが必要になり。テレビそのものの構造がスクリーン機能中心の、極めて単純な構造に変ることが避けられない。
こうして家電の需要カテゴリーを占めていたテレビと録画機がマーケットから消滅する世界が来る。当然ソニーの事業構造が大転換期を迎えることになるわけだ。このとき未来のテレビの中心価値はスクリーン機能の精密化と音響効果の高質化が前面に躍り出ることになるはずだ。そこにいち早く競争優位の橋頭堡を築くことがソニーの今まさに取り組むべき戦略課題になる。
プレステにテレビを配信することはこうした大転換に備えることを誰よりも早く実現しなければならないことをソニーは自覚しなければならない。
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