キリンビバレッジは来夏をめどに、自動販売機10万台に通信機器を設置する。自販機の売れ行きデータを無線で収集し、リアルタイムの販売状況把握システムによって、商品補充や自販機専用飲料の開発に役立てる。
「矢野経済研究所(東京・中野)によると、国内飲料市場は14年度で前年比1.1%減の4兆9770億円になったもよう。飲料総研(東京・新宿)調べでは、国内自販機台数も約250万台で横ばいが続く。昨年の消費増税に伴う値上げもあり、販売が苦戦している」。(日経新聞2015.5.20朝刊)
こうした販売の低迷状況をスマート自販機のデータ活用で切り拓こうとする作戦のようだ。キリンビバレジは販売データの活用をテコに、自販機経由の売上高を2015年に950億円と、14年比5%増やす計画だ。
自販機データの活用はまずは販売状況を前提にして、オペレーターに最適補充量をナビゲートする。こうして設置場所ごとに最適な品ぞろえを実現し、併せて最適在庫を保持することで欠品のリスクを極小化させることができる。
またオペレーターが商品補充の作業をするにあたって、現地で在庫数量確認の手間が省けることで補充に要する作業時間を半減することが可能になる。
「多くの利用者が見込める自販機には、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の共通ポイント『Tポイント』の提供機能を付ける。対象台数は年内に2倍の2万台とする。
利用者がTポイントカードを読み取り端末にかざすと、会員の年齢や性別を認識する。『雨が降ると女性にも温かい缶コーヒーが売れる』『20代男性が炭酸飲料をまとめて買うことが多い』などきめ細かく把握できるようになる。CCCが提携する他の飲食チェーンや小売店の情報を組み合わせた顧客分析も検討する」。(同)
このようにスマート自販機は自販機に通信機能付きのPOSシステムを取り付けることに他ならない。取得されたデータは適時センターに集積され、オペレーションの最適化に活用される。
ところでPOSデータをもっとも有効活用している小売業はセブンイレブンに違いない。セブンイレブンの鈴木会長兼CEOはPOSデータを徹底して仮説検証に活用することにこだわった。
過去の売れ行きデータは販売予測には使えない。なぜなら売場やお客様の変化を織り込むことができないから、との鈴木会長の信念がこのこだわりの根拠だ。
しかも仮説検証はコンビニ・ビジネスの関わる全ての関係者がそれぞれ自律的に行ってはじめて意味がある。なかでも店舗スタッフが商品発注にともなって実施する仮説設定こそがコンビニ・ビジネスにとってもっとも重要だというのも鈴木会長のこだわりだ。
店舗はそれぞれそれを取り巻く環境が異なる。多様な環境に置かれたそれぞれの店舗の品揃えや、発注数量は店舗の担当者が環境変化を肌感覚で感じこれをベースに意思決定することが必要になるわけだ。
そして重要なことはPOSデータを駆使して仮説の検証を繰り返して、仮説の修正や補強や次回発注への改善に活かすことが、日々の発注量や棚割りを最適解にすることにつながるということだ。
つまりPOSデータはオペレーションに携わる人の意思決定をサポートすることに活かされてはじめて大きな効果が出るということだ。従ってスマート自販機のデータも自販機に商品を補充するオペレーターのオペレーションをサポートすることに徹底的にこだわったシステム設計をすることが必要だ。
結局、スマート自販機を売上拡大につなげるための最重要成功要因は、自販機オペレーターが仮説検証を自律的に行うためのデータ提供にフォーカスした機能がどれだけ充実しているか、またそれを活用してオペレーターが仮説検証サイクルを自律的に回すためのスキルアップのための訓練がどれだけ充実しているかに他ならない。
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