憲法第9条の全文
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない
憲法第9条の全文を素直に読めば、集団的自衛権や海外派兵は憲法違反に該当することは疑いをはさむ余地はない。
国際紛争を解決する手段として戦略を持たないのであるから、自衛隊を海外に派兵した時点で、自衛隊そのものは憲法に違反する存在になることが明白だ。
そもそも日本の現時点での喫緊の安全保障上の最重要課題は以下の二つしかない。
1.地震、津波、台風などの自然災害への備えが十分ではない
2.食料の自給率が40%を割っていること
自然災害への対応
東日本大震災を契機として日本全体の火山活動が活発になっている。同時に首都直下型地震、東海地震、南海地震のリスクも高まっていると推測されている。
例えば首都直下型大地震が発生したときの被害状況は考えるだけでもおぞましい惨状が目に浮かぶ。死者1.1万人、倒壊火災家屋85万軒、被災者数1000万人、被害総額112兆円が予想されている。
M8クラスの東海メガ地震でも、死者1万人、倒壊火災家屋30万軒、被害総額30兆円が想定されている。
また東海巨大地震は南海メガ地震を誘発する可能性が高く、この場合の被害はそれこそ計り知れない。
歴史をたどると1707年には駿河湾を震源とするM8クラスの宝永大地震が発生し、しかも直後に富士山が噴火し、降灰による被害も重なった。
1770年代には岩木山、浅間山が大噴火し降灰とそれによる悪天候は農産物に壊滅的な打撃を与え、天明の大飢饉につながった。
大地震と大噴火はそれこそ地続きの自然災害として連動しているように見える。
このような地震、津波、噴火などの自然災害に対する、予知も予防も未だに十分とはいえる状況にはない。せめて災害後の救援活動や復旧活動がスムーズに
展開されるための準備が計画的になされる必要がある。
こうした救援活動、復旧活動の中核を担うのが自衛隊である。人を殺すのではなく人を救うことのプロフェッショナルとしての価値こそ自衛隊の存在価値なのだ。
このための技術を設備的にもソフト的にも磨きをかけることに、ヒト・もの・金を集中的に投下することが今もっとも求められているのだ。
自衛隊が人を活かすプロフェッショナルとしての技術習得に専念すれば、世界中から尊敬を集め、その支援を乞われる機会も増加し、世界中に安心、安全を届ける存在として平和国家日本への信頼を確実なものにしていくはずだ。
食料自給率が40%を割り込んでいる
低い食料自給率を改善することも日本の安全保障上の最重要課題だ。つまり食料供給量の60%が輸入によって賄われているということだ。
自給率の高い順に見ていくと、コメの自給率は96%、野菜が80%、魚介類が62%の3品目だけが突出して高く、他の作物は軒並み30%以下の低水準にある。
例えば麺やパンの原料である小麦は9%の自給率でしかない。また和風食材の中心に位置する醤油、味噌、豆腐、納豆などの原料となる大豆の自給率は26%に甘んじている。油脂などは圧倒的に低い3%とほとんどが輸入品だ。そしてカロリーの素である畜産物の自給率も17%でしかない。しかも和牛や和豚の飼料となるトウモロコシもそのほとんどが輸入品で賄われている状況だ。
つまり日本の自給率は圧倒的に高いコメとその他の農産物に二極分解されている極めてゆがんだ構造になっていることが問題として浮かび上がってくる。
日本の農政がコメを中心とした政策展開に終始し、他の食料を海外特にアメリカに依存するという大方針に従って展開されてきた結果が、このようにゆがんだ農業構造を作り出してしまったのだ。
そして消費者のコメ離れとか消費カロリーの減少はこめの需要を傾向的に減退させてきたので、減反政策が昨今の農政の重要課題になってしまっている。
そして結果的に、食料自給率が40%を割ってしまっているのに、休耕田や耕作放棄地が100万haにも達する農地の惨状が引き起こされてしまったのだ。
自給率を上げるのはきわめて単純なことだ。これらの休耕田や耕作放棄地を畑に変えて、1950年代から作付けされなくなった小麦や大豆そして飼料用のトウモロコシを植えればいいのだ。同時に水田を放牧地に換えて牛や豚を飼えばいいのだ。
またこうした畑作物や畜産物を加工する中小の加工場を起業して、地産地消の循環体系を作ればいいということだ。
こうして自給率は改善に向かうことになるはずだ。自給率が上がれば輸入が減り、国内生産額が増加し、GDPは1を超える乗数で増大に貢献することになる。
今こそ、安保法制を変えて海外派兵や同盟国防衛のような張り子の虎のような「抑止力」の火遊びに夢中になるよりも、もっと大事な本当にこの国の安全を保障する重要施策に全力をあげて立ち向かうべき時なのだ。
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