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11日 9月 2015

読書ノート:デービッド・アトキンソン著『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』(講談社+α選書)



「日本は経済力が強くて住みやすい」はほんとうか?

 

日本について他国と比較して、「安全だ」、「勤勉だ」、「技術力が高い」、「おもてなしが上手だ」、「住みやすい」などの点で自慢したり、自信を持ったりする日本人が多い。

しかし著者はそれらの他国に対する「強み」は、事実ベースで証拠が明確にあげられてはおらず、概して一方的な思い込みに過ぎないことが多いと説く。

例えばIMFの統計に表れた購買力平価でみた人口一人当たりGDP(US$)のランキングを見ていただきたい。

1.カタール                                143,432 

2.ルクセンブルグ                     92,049

3.シンガポール                         82.762

9.スイス                                    58,087

10.香港                                    54,722              

11.米国                                    54,597

15.オランダ                            47,355

16.オーストラリア                  46,433

17.オーストリア                     46,420

18.スウエーデン                     45,986

19.ドイツ                                45,888

20.台湾                                    45,854

21.カナダ                                44,843

22.デンマーク                         44,343

24.ベルギー                            42,973

25.フランス                            40,375

28.英国                                    39,511

29.日本                                    37,390

この数字は国民一人あたりの生産性を表現していると考えることができる。なんと日本は29位にあまんじている。

残業をもいとわず良く働く、勤勉な日本人ではあるのだが、仕事の効率からみると米国に比較して70%の水準にしかすぎないのだ。台湾に比較しても80%の水準なのだ。

つまりは日本人の働き方にはかなりムダが多いということになる。

日本の経済力の強さにしても、技術力や資本蓄積力が突出しているからではなく、単純に人口が多いからだといえなくもない。

こう考えると、「日本が住みやすい」ということも、事実ベースでは割り引いてみなければならないと思われてくる。

 

なぜ日本人の仕事の効率は低いのか?

 

日本人の働き方の効率の悪さは何にゆらいするのだろうか?

著者はいくつかの原因を上げている。

一つには会議がやたらに長いことが挙げられる。関係者のコンセンサスを十分に取らなくてはならないという思い込みが長い会議の原因ということだ。

二つ目に挙げられている原因は「完ぺき主義」だ。ほとんどの事柄は90%の品質で十分なのに、100%を目指そうという完ぺき主義がはびこっている。

90%で納得せずに残りの10%を追い詰めていくと、それまでに要した以上の時間がかかってしまう。しかも100%で手に入れた品質は90%で達したものとさほど変わらなかったりする。

三つ目にあげられる原因は数字で判断しないことだ。ほとんどの事実は数字やデータで確認することができる。しかし日本では数字によらず勘や経験や思い込みで判断が下されることが多い、と智者は言う。

これらの原因にも増して効率の悪さをもたらす重要な要因として「面倒くい」ことを著者はあげている。

「日本の『効率が良くない』というものの問題を辿っていくと、かなりの部分はこの『面倒くさい』という言葉に帰結する感じがします」

 

「面倒くさい」とはどういうことか?

 

何らかの問題や課題を解決しようとするときに、「ゼロベースで考える」とか「根源的な解決策を考える」ことが求められるはずです。しかし日本では、根本的な可決策を考えたり、ましてやそれを実行するとなると、とても「面倒な」事態になるというのが著者の考えだ。

どういうことなのか?

日本では、現状維持こそが波風が立たず、全員にとって居心地の良い状態と言える。そこにあえて波風を立てて、しかも有力者や上司の感情を害することまでして、かいぜんや改革を行うことは許されないことになるわけだ。

根本的な解決をゼロベースで実行するようなことを提案しようものなら、とてもではないが「面倒」なことになるわけだ。

だから誰もそのような面倒なことにならないように、仲間の調和を崩さないように、慎重に振る舞うことが求められるということなのだ。

ということで「面倒くさいことはしない」ということが日本の組織人の行動原理になったということだ。

この代償として日本は困難な問題を抜本的に解決する能力を失うことになってしまったということだ。

 

日本の強みは?

 

日本の強みも指摘してくれている。強みは「加える」こと。つまりは「新しいものを取り入れつつも古いものを残していく」ということだ。

日本では古代から新しい勢力は古いものを根絶やしにせず、古いものを残しながら、あるいは古いモノのを土台としてその上に新しい勢力を確立してきた。このことはヤマト王朝が出雲の国を制服するのではなく、出雲を包摂しつつ国造りをしたことまで遡るわけだ。

さらには、武家政権が実質的に権力を握った鎌倉時代以降も天皇制が連綿として残るのもそのことを良く象徴している。

観光が日本再生の切り札として位置づけた時に、この「古いものが残っている」ことが、世界に類を見ない日本の優位性を保証するものになるということだ。

 

強みと弱みは結び合っている?

 

このように見てくると著者が言う日本の強みと弱みは分かちがたく結び合っているようにも見えてくる。波風が立つのを嫌う風土は、古いものを否定せず、残しながら新しいものと結合させることを得意としてきたからだ。

こうした風土において改革は抜本的に行われることはなく、関係者が全員納得のゆく、微温的なものとして実現するしかないということを意味しているのかもしれない。

 


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