日経ビジネスオンラインがセブン&アイの鈴木会長の記者会見の一部始終を掲載している
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/040700304/?P=1
そこから浮かび上がったのはまことにお粗末な経営の実態だった
記者会見には鈴木会長と村田社長のほかに佐藤氏、後藤氏という二人の顧問も同席していた。経営の責任を担っているわけでもない二人がなぜ同席したのか。
それは今回の辞任劇の背景に伊藤最高顧問が井阪社長更迭について反対であったことがあり、その経緯を伊藤顧問と鈴木会長の「連絡役」に説明させるためであった。
「鈴木会長から紹介されて最初にマイクを握った後藤顧問の語った話は、日本を代表する企業の実態とは思えないようなお粗末な中身だった。『伊藤名誉会長と鈴木会長のお部屋を行ったり来たりする役割』『井阪社長のお父様と昵懇の仲』など、理よりも情実や縁故が物を言うような、極めて属人的に経営の意思決定がなされてきた様子が浮かび上がった」。
彼らの話から浮かび上がるあらすじはこう推測される。
鈴木氏が井阪氏に社長解任の内示をしたとき、井阪社長はこれを受諾した。しかし井阪社長が伊藤最高顧問に報告した時点で、伊藤氏は井阪氏に「やめる必要はない。鈴木さんに受諾しない旨つたえなさい。私があなたの社長継続を約束する」と説得した。そこで井阪氏は鈴木氏に叛旗を翻す決心をしたということだ。
その後伊藤氏は井坂氏や伊藤氏の二男の伊藤雅敏取締役と一緒になって取締役会で人事案を否決すべく多数派工作に取り掛ったというわけだ。
鈴木氏は「資本と経営の分離」を標榜し、赫々たる実績を気付きながら伊藤氏から経営の実権を与えられてきたという自信がある。しかし伊藤氏からしたらその実績は認めるもののすでに83歳に達した鈴木氏にいつまでも経営を任せておくつもりはなかった。チャンスを見て鈴木降ろしの行動に移るべく身構えていたということだ。
そこへ鈴木氏が井阪氏の社長解任の人事案を提案した。井阪氏のもとでセブンイレブンは7年間最高益を塗り替え、コンビニ業界さらには小売業界でのゆるぎない地位を築いてきた。外部から見れば解任されるいわれは全くない理不尽な人事だ。
鈴木氏にしてみれば7年間社長を務め求心力をましてきた井阪氏が自身のコントロールを超えるモンスターになる兆候に懸念を覚えていた。そこで自身のコントロール下で唯唯諾諾と汗を流すだけの古屋副社長に替えようと思い立ち社長更迭を画策したということだ。
この鈴木氏のムリ筋の人事案に伊藤氏はすかさず隙をついてきたというわけだ。
なんのことはない。ことは伊藤氏と鈴木氏の長期にわたる潜在的な権力闘争が表面化したということだ。
残念ながらセブン&アイのコーポレート・ガバナンスの実態はお粗末と言わざるを得ない。
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