日経新聞2016.8.5付朝刊は「中国政府内で金融政策を巡る部門間の溝が表面化した」とする記事を掲載した。
「投資の許認可権限などを握る国家発展改革委員会は3日午前、投資の下支えに関する提言を盛った文書を発表した。金融市場が注目したのは『適切な機に一段の利下げ、預金準備率引き下げを実施する』との一文。発表を受けて中国の株価は上昇した」。
しかし中国人民銀行(中央銀行)は動かず、発展改革委は3日午後、文書をいったん取り下げ、その後、改めて発表した文書からは金融緩和に関する表現を削除した。
こうした異例のドタバタ劇は金融緩和を志向する発展委と人民元の下落を回避しようとする人民銀行の間に経済金融政策の認識に大きな差異があることを物語っている。
こうした政策の違いはすでに5月に表面化していた。
「5月に党機関紙、人民日報に『権威人士』なる人物が登場。中国経済の行方について、V字型回復は不可能、U字型回復はあり得ずL字型をたどると強調して過剰債務や安易な財政政策に警鐘を鳴らして注目を集めた。習近平・国家主席の側近とみられるこの人物は、足元の小康状態は古い手法に頼っており、バブルを生んでリスクを増大させるとも断じた」。
権威人士は習近平国家主席に近い人物との見方が一般的で、金融緩和をテコにして経済のハードランディングを避けようとする李克強首相への、強烈な批判と受け取られている。
つまり経済金融政策の政府内の違いは習近平国家主席と李克強首相との権力闘争が表面化したものと考えられている。
習近平主席は李克強主席の出身母体である共青団の影響力の弱体化を狙って共青団への党中央による統制を強化しつつあり、李克強派に対する攻勢はじわじわと実を挙げていると考えられる。
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