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12日 1月 2017

イタリアの解雇規制緩和は日本にとってのベストプラクティスたりえるか?

 

安西法律事務所の弁護士倉重氏のレポートによると昨年イタリアで労働法が改定され、これまでの解雇規制を緩和し、不当労働行為などの差別的解雇でないかぎり、解雇の金銭解決が認められることになったという。http://toyokeizai.net/articles/-/153024

 

イタリアでは勤続年数が1年単位に2ヶ月分の解雇手当を払えば解雇が原則自由に行える。ただし手当の上限は24ヶ月(勤続12年を超えても解決金は増加しない)とされている。

 

解雇規制の緩和はイタリアでは次のような目的を掲げて実施された。

 

  1. 厳しい解雇規制の下では解雇に伴うコストの見通しが立たなかったり、見通しが立ったとしてもその見積が多額に上るため、起業や海外からの資本投下が行われにくかった。規制緩和によってこの問題が解消され起業が容易になり、海外からの新規投資も活発になり、これに伴う雇用の拡大が期待される。

  2. 中小企業にとっては解雇に伴う解決金が業績を圧迫し倒産に追い込まれるケースが多くみられた。この問題も解雇に伴う解決金がリーズナブルになることで中小企業による雇用の拡大が活発になることが期待される。

  3. 技術革新のスピードが速く、求められるスキルの変化も急速である。要請されるスキル変化にふさわしい人材の入れ替えが解雇規制によって実行できずに事業の陳腐化が進行することに有効な手を打てなかった。いわゆる雇用のミスマッチ。解雇規制の緩和で変化する必要スキルを持つ人材に対する雇用が積極的に行われることになる。

    解雇規制の緩和に上記のようなメリットが認められたとしても、個々の労働者にとっては解雇の自由化は雇用の不安定化を意味し、労働者の不安を増大することに他ならない。こうした不安を取り除くために、イタリアでの規制緩和は、解雇された労働者の保護を強化し、不安を払しょくするために次のような施策が解雇規制の緩和と同時に行われることになった。

 

  1. ハローワークの機能を充実して解雇された労働者の求職活動を強力に支援する。

  2. 失業手当を厚くする。

  3. 労働監督機能を強化拡充して不当労働行為による解雇を未然に防ぐ。

  4. 法人税、社会保障費の面で、雇用維持、雇用拡大企業に対するインセンティブを付与する。

 

以上のような対応策を用意したところで、若年層の失業率が40%にも達するイタリアで解雇規制の緩和を実施すれば、失業率がさらに増大してしまうリスクはきわめて大きいと思われる。

 

イタリアの場合企業の倒産、とりわけ中小企業の倒産が増大したり、起業が活発に行われなったり、外資の新規投資が伸び悩んだりする原因を解雇規制に求めた。従って企業活動を活性化し、経済成長を持続的に求めるために解雇規制を大幅に緩和して、労働力の流動化を実施するに至った。

 

しかし日本の場合解雇規制は本当に企業活動の足かせとなっているのだろうか。企業はリストラと称して業績が思わしくなった場合に従業員の整理を実施することは日常茶飯事に行われている。

 

とはいえリストラは最後の最後に取られる手段として行われるのであって、そこに至ることなしに危機を乗り越えるためのあらゆる手立てを実施した上で、最終的にやむを得ずというかたちで取られる手段だ。したがってリストラを実行する経営者は従業員に対しても社会に対してもうしろめたい気持ちを持たざるを得ないし、またそうであるがゆえにリストラ後の経営立て直しに必死に取り組む努力義務を自覚するのだ。

 

解雇規制が緩和されれば経営者はそれこそ自由に、リストラにまつわるやましさなど毛ほども感ずることなしに従業員を解雇することができてしまう。まさに経営者はモラルハザードにおちいることになるのだ。安易な解雇は経営者から従業員の雇用を護るという自覚を無くして、安易でお手軽な経営を助長することになる。

 

解雇規制は経営者に安易な経営をさせえないために自らを律するための箍(たが)でもあるわけで、この箍があるおかげで日本的な経営は世界から賞賛される輝きを持ちえたのではなかったか。

 

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