「日経ビジネスオンライン」に掲載されている河合薫さんの「無責任な『女子力』願望が強要する女性の社畜化」が面白い。サブタイトルは「女性特有の視点、気遣い…そんなもんないワ!」
アベノミクスとやらの打ち手の一つに女性活躍がある。この方針に踊らされて、大企業の経営者が女性管理職比率の高度化を競い合って悪あがきをしている。
だいたい「女性管理職比率を30%にせよ」と政府が指示しこれに唯々諾々従う風潮はまさに全体主義に他ならない。中国共産党の一党独裁体制に負けず劣らないほどにひどいもんだと考えるべきなのだ。
全ての企業は継続的に事業を展開するうえで必要なことなら当たり前に実行するしかない。女性の雇用も活躍も必要に迫られて、積極的に実行するほうが良いと考えるから行うのであって、お上から命令されてやるようなものではない。
現に慢性的に人手不足に悩む中小企業は女性の力を借りなければ存続は不可能なのだ。そこでは女性を特別扱いはしないし、あるがままに戦力化しているだけだ。
「女性の働き方改革」はまさに「女性の悪しき働かせ方改革」にほかならない。女性は男性とは異なる「女子力」なるものをもっていて、それを縦横に発揮していただくことが必要なのだ、などという見当はずれの働き方をめざしているからだ。
河合さんによれば女性を働かせるために、女性にとって不自然とも、迷惑千万とも思える期待が寄せられ、これに辟易して働く意欲さえ失う女性が増えているというのだ。
「とにかく彼女たちはみなさんが想像する以上に、
•女性=結婚、出産
•女性=女子力
•女性の活躍=管理職
•女性の働きやすい職場=育休・時短勤務の充実
•女性=休日はプライベートを充実させるetc、etc……といったキーワードで女性を語るテクストに辟易している」。
『働く女性はこうに違いない』という見方が強くなってきていることに憤り、戸惑い、疲弊しているのだ」。
女性管理職比率の目標達成のために経験もトレーニングも不十分な女性を管理職に登用する女性にだけの昇任バブルが蔓延し、しかも管理職は成果主義でチャレンジングな目標を求められ、部下も含めて疲弊している状況が目に浮かぶ。
河合さんは女性の活躍を無理なく実現するにはそれなりの準備がなされなければならないという。「仕事の再設計」というトレーニングプログラム」がそれだ。
「『仕事の再設計』というトレーニングプログラムはチーム、個人、管理職、経営トップが一丸となって次の3段階を実行することにより、従業員のワークライフバランスを実現する。
(1)仕事と理想的な従業員像についての既存の価値観・規範を見直す。
(2)習慣的な仕事のやり方を見直す。
(3)仕事の効率と効果を向上させ、同時に仕事と私生活の共存をサポートするための変革を行う。
プログラムを完成させるには、従業員からの要望と企業からの要望を一つひとつ丁寧に組み合わせる作業が重要になる。実に手間のかかる作業だ。その作業はまるで『ジグソーパズルを行うのと同様である』と言われるほど、頭と労力を使う。
もし、本気で『女性の働きやすい職場』を目指すなら、仕事の再設計をやらなきゃダメ。今のように『ムード』や『福祉』でやっていたのでは、ウィンウィンならぬ、フヒ~フヒ~。女性たちは疲弊し、不満を蔓延させるばかりか、企業もいずれヘタっていく」。
河合さんの提案する「仕事の再設計」は女性の活躍のためというより、性別に関係なく生活と仕事の関係のあるべき姿を再発見してそれを全員で目指そうということから始まるようだ。
しかし河合さんの言うように再設計のために多くの労力と知恵を出さなければいけないとしたら、並みの企業では実現するのは困難だ、
再設計はそれほど難しく考えることはないのだと思う。すべての仕事を棚卸して、価値ある仕事だけを選択し、それ以外を排除することから始めればいいだけなのだ。
そしてもっとも排除しなければならないことは、管理職や経営者が思いつきで部下に仕事を与える悪しき習慣なのだ。
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