読書ノート:ジェイク・ナップ著『SPRINT 最速仕事術』(ダイヤモンド社刊)

 

グーグルで開発された高速問題解決メソッドがSPRINTだ。

 

通常多くの人材を何か月も投下し、巨額のコストをかけて実現している課題解決や製品・サービス開発をなんと7人の専門家だけで5日間で実現してしまう驚異のメソッドだ。

 

Sprintはつぎのような状況で役に立つという。

 

・リスクが高いとき

 

・時間が足りないとき

 

・何から手を付けていいかわからないとき

 

まさに絶体絶命の状況で役に立つということではないか。

 

本書はこのSPRINTのノウハウを懇切丁寧に開示してくれている。

 

思わず、「こんなにすべてのノウハウをタダ同然で提供してくれていいの」と随分と得した気分にさせてくれるほどだ。

 

SPRINTの手順は簡単だ。月曜日からはじめて金曜日には大きな成果を手にしている。

 

その手順は次のとおりだ。

 

 

 

準備  適切な課題とチームを選ぶ。SPRINTのための時間と空間を用意する。

 

月曜日 問題を洗い出し、どの重要部分に照準を合わせるかを決める

 

火曜日 多くのソリューションを紙にスケッチする

 

水曜日 最高のソリューションを選び、アイデアを検証可能な仮説の形に変える

 

木曜日 リアルなプロトタイプを完成させる

 

金曜日 プロトタイプを生身の人間に試してもらう

 

 

 

これだけ見るとあたりまえの手順であって、「これのどこが画期的?」と思ってしまう。

 

実はこの月並みな手順を実行するに際してのルールが画期的なのだ。このルールがあるから超高速で問題解決が可能になるのだ。

 

そのルールとは次のとおりだ。

 

  1. 課題解決の目標を定義する。「新規顧客によいコーヒーをオンラインで届けること」

  2. 目標実現の前提条件や障害を定義する。定義にあたっては疑問文の形式で表現する。「顧客はうちの専門知識を信頼してくれるだろうか?」

  3. チームに「決定者」を参加させる。意思決定者だ。彼がメンバーの一員でないと、チームがせっかく創造したソリューションも、きまって後で意思決定者からのちゃぶ台返しを食らって日の目を見ないことになる。

  4. チームメンバーから「進行役(ファシリテーター)」を選任する。

  5. 一日6時間集中して作業する。普通は10時から17時まで。昼食休憩を1時間とる。メンバーはこの6時間缶詰めになる。

  6. デバイス(PC、スマホなど)を持ち込まない。ホワイトボードとふせんと紙で作業する。

  7. 全員での議論を避けて個々人が作業に集中する。作業結果を持ち寄って全員で疑似投票を行ってベストを選定する。ブレーンストーミングは時間効率がきわめて悪い。

  8. 決定は民主主義によらない。ベストソリューションの選択にあたって各人が投票はするが、最終決定は「決定者」が行う。

  9. ベストソリューションに従ってプロトタイプをつくる。プロトタイプはどんな場合にも制作可能だ。

  10. プロトタイプを選ばれた5人の顧客にテストしてもらい、仮説を検証する。

 

 

 

ブレストはしない。民主主義はしない。たぶんこれがSPRINTの真髄なのだ。

 

そんなばかな!

 

でもあたかも全員参加で文殊の知恵が湧きだすように思われているけれど、ブレストも民主主義も時間ばかりかかってその割にたいした成果にはつながらない。そんな経験をいやと言うほどしてきたのではないだろうか。

 

個々人が一人で集中して考え抜いて、それを全員で評価するほうがどれだけ効率的でしかも高品質の作業につながるかわからない。

 

多数決で決めても意思決定者が腑に落ちない選択は最終的には良い成果にはつながらないこともいやというほど経験してきたではないか。

 

だから、超高速で最大の成果をもたらすためには、ブレストも民主主義も捨てなければならないのだ。

 

こうしてみるとSPRINTは特別な重要プロジェクト向けのメソッドだKでなく、日常的な会議などにおいてもきわめて有効なメソッドになるはずだ。

 

このような意味においてもSPRINTは労働生産性の飛躍的高度化に向けての切り札になるに違いない。まさに「働き方改革」のメソッドになるということだ。