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12日 7月 2017

読書ノート:村上世彰著『生涯投資家』(文芸春秋社刊)

 

村上氏は日本におけるアクティビスト(もの言う株主)の草分けだ。

 

次の条件を抱え込む企業が村上氏の格好の標的だ。

 

・無借金

 

・現金等価物(現預金ならびに有価証券)>株式時価総額

 

・BPRが1を下回る

 

つまり安定的な利益を稼ぎながら、その利益を企業内部に溜め込んで株主に還元していない企業だ。

 

村上氏はこうしたキャッシュリッチな企業に投資する。そしてまず経営者に対して成長戦略を問いかける。これに対して満足な回答が得られなければ、配当の増額や自社株買いを要求する。

 

こうして配当を稼ぎ、さらには株価が上昇したところを見計らって売り抜ける。

 

このような手法で投資家から巨額の資金を任されるようになって、その潤沢な資金を背景にTOBやMBOという手練手管を使って経営者に対して大いなるストレスをかけることもいとわない。

 

村上氏はこうした投資行動の前提にある「崇高な」ミッションがあるのだと説く。

 

 

 

「日本にはお金がある。日本政府は5百兆円を軽く超える金融資産を保持している。海外純資産残高も3百兆円を超えていて、永年世界1位だ。家計の金融資産も、1千7百兆円以上あると言われている。それなのに世界一の借金大国となっている。なぜなのか。わたしの答えは簡単だ。『お金が循環していないから』という理由に尽きる。

 

資金の循環を促すきっかけとなるのは、まずは企業がコーポレート・ガバナンス・コードに則り、投資や株主還元を行って手元資金を放出しながら、余分な手元資金や銀行からの借り入れで賄った資金を、昇給や新規雇用に積極的に回すことだ。その結果新しい仕事が生まれたり、リターンを受けた投資家が次の投資先を探したり、昇給や仕事を新たに得た人々がお金を使うようになる。こうして景気が動き始めて市場が活性化してくると、個人も銀行に預金するだけでなく、株式投資を行ったり、不動産へ投資したり、という新たな動きが生まれる。その動きの一つひとつから、新たな税収が生まれる」。

 

 

 

つまり企業が手元資金を株価の上昇に向けて流出させることで国民経済的な資金循環の流れが生まれ、それがさらなる勢いを付けて日本経済が活性化するという構図だ。

 

しかし残念なことに村上氏の手法は株主だけの利益に資するだけであって、国民経済的な資金循環を生み出す駆動力にはなり得ない。

 

つまり村上氏のミッションは株主だけあからさまな利益追求を糊塗するためのいいわけにしかすぎない。

 

企業は株主だけでなく顧客、従業員、取引先、地域社会などの多くのステークホルダーによって支えられて活動が展開できている。

 

これらのステークホルダーのすべての満足が同時に得られることがなければ継続的な成長はありえない。とすれば過剰に溜め込まれた利益があるとするならば、それはすべてのステークホルダーに均等に配分されなければならない。

 

昨今のコーポレート・ガバナンス・コードに見られる企業に対する株主優先の動きはこの意味において警戒しなければならないことと受け止めるべきだ。

 

読書ノート:村上世彰著『生涯投資家』(文芸春秋社刊)

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