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08日 5月 2018

読書ノート:マイケル・ウオルフ著『炎と怒り』(早川書房刊)

トランプ政権誕生からバノン大統領補佐官の辞任までのドキュメンタリーだ。

なぜトランプは大統領になれたのか

読者はまずトランプ大統領誕生の秘密を知って驚くに違いない。その秘密とは、トランプ選挙対策陣営のすべての人々が、トランプ自身を含めて誰一人として「トランプが大統領に当選するはずはないと」確信していたことだ。

このような負の自信に満ちた選対の人々は、「負けるに決まっているが、クリントンに対してここまで接戦にこぎ着けられたことで、その戦いに参加し貢献した自分の次のキャリアは輝かしいものになるに違いない」という事を唯一のモチベーションとして戦っていたのだ。

万が一にもあり得ない事が起こってしまったことが、トランプの大統領就任以後の信じられないドタバタを生み出すことになったというわけだ。

トランプ氏はなぜ大統領になるはずがないと自身の選対陣営からも信じられたのだろうか。それはトランプ氏が大統領にはあまりにもふさわしくない人物だったからだ。それを示すトランプの桁外れの非常識さを挙げ出せばきりがない。

トランプは自己中心で、わがままで、平気で嘘をつき、とても飽きっぽくて、すぐに怒りを露わにし、演説は支離滅裂で、紙に書かれた情報には見向きもしない、だから常識がなくて、そのうえ無知なのだ。

しかしインテリが大半を占める政治家や官僚やマスコミの人々から見たら異星人のようなトランプだからこそ大統領選にお見事な勝利を納め、トランプに票を入れた人々さえも信じなかった状況を作り出したのだ、

そうトランプは無知だから強いのだ。常識がないから強いのだ、単純にしか考えられないから強いのだ。つまり大衆そのものだったのだ。だから大統領になってしまったのだ、まさしくトランプはポピュリストそのもので、自分の意思を大衆の意思に重ね、結果として大衆の意思を占有できたからこそ大統領選に勝つことができたのだ。

トランプの実像

トランプ大統領は理屈に基づく意思決定はしない、あるいはできない。彼にとっては直感こそが意思決定のよりどころなのだ。そしてその直感は、「自分がヒーローになれるか?」という価値判断のみに基づく直感なのだ。

「誰もがトランプが好きだ。そしてトランプをヒーローだと思っている」。これこそがトランプを安心させる状況なのだ。この状況にマッチしない不都合な現実や論評はすべて「フェイクだ」と片付けられるハメになるわけだ。

ロジックの積み重ねによる判断は説明が可能だ。しかし直感に基づく判断は説明不能だ。「フェイクだ!」というような断定的な決めぜりふをぶつけるしかない。トランプがtwitterを活用するのは決めぜりふを投げかけるメディアとして最高だからだ。Twitterは短文しか受け付けないから、説明的な長文を書けないトランプにはもってこいのメディアなのだ。

大衆はこれまで政治を牛耳ってきた政治家、官僚、マスメディアというエスタブリッシュメントの掲げるきれい事の政策をいつもうさんくさく見ている。既成勢力がいかに美しいビジョンを掲げようと大衆の生活は一向に良くならない。むしろ大衆は追い詰められていると感じている。

大衆の置かれたこの状況を鋭く感じ取り、直感的な言葉で現実を断罪したからこそトランプは大衆を代弁することができたのだ。「グローバリゼーションこそ大衆を貧困に追いやっている」などという理屈は抜きに、「アメリカ・ファースト」だけを語ったからこそ大衆はトランプに期待をかけたということだ。

トランプ抜きのトランピズム(トランプ主義)

トランピズムの教祖は実はトランプではなくバノンだ。バノントランプ大統領を巡る補佐官や閣僚メンバー内での権力闘争に敗北して下野した。バノンはまさに軍人やゴールドマンサックス人材からなるエスタブリッシュメントとジャレットとイバンカのトランプ親族派閥の連合軍との戦いに敗れたのだ。

しかしバノンはトランピズムのもつ大衆を取り込む圧倒的な力を信じかつそれを自ら体現する力をこの間しっかりと身につけることができた。

バノンはトランプ政権はもはや一期4年を全うすれば御の字でむしろ4年も持たないと判断している。

ロシア疑惑にはじまりポルノ女優との不倫などトランプを追い詰める輪は徐々に狭まってきている。この状況を踏まえてトランプに代わってトランピズムの教祖として大統領選に打って出ようというのがバノンの戦略だ。

虐げられた大衆を巡る右と左の闘争

一方バーニー・サンダースを教祖とする民主党左派もリベラルな大衆の代弁者として依然として勢力を拡大しつつある。

となるとアメリカの次期大統領選挙は極右と極左による大衆の争奪戦になることが予想されることになる。

 

 

読書ノート:マイケル・ウオルフ著『炎と怒り』(早川書房刊)

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