日経新聞4月10日朝刊は、欧州委員会が21年4月9日、30年達成納期のEUのデジタル改革目標、名付けて「デジタルコンパス」を発表したと報じた。
記事によるとEUのデジタル戦略目標は以下の4本柱からなる。
1. デジタルリテラシーの向上と高度デジタル技術者の育成。
(1) IT専門家を2000万人に増やす。19年現在は780万人。
(2) 成人の80%が基本的デジタル技術を習得(現状は58%)。
2. 安全・高性能・持続可能なデジタルインフラの整備
(1) 全家庭にギガビット通信を接続(現状は59%)
(2) 全ての居住地域で第5世代移動通信システム(5G)を提供(現状は14%)
(3) 気候中立に対応した高セキュリティーなエッジノード(クラウドサービスと接続する基地局やルーターなどの情報機器、処理装置を1万台配備し、域内のあらゆる地域のビジネスに対してデータサービスへの遅延のないアクセスを保証(現状は配備なし)
(4) 次世代半導体の生産シェアで世界の20%をめざす。
(5) 2030年までに量子情報処理技術で世界をリードするために、2025年までにEU初となる量子コンピュータを導入
3. 企業のDX推進に対する支援。
(1) 域内企業の75%がクラウドサービス(現状は26%)、ビッグデータ(現状は14%)、人工知能(AI、現状は25%)などの技術を活用
(2) 域内中小企業の90%以上が最低限の基礎的デジタル技術を活用(現状は61%)
(3) ユニコーン企業(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)を育成し、現在の2倍となる250にする。
4. 公的サービスのデジタル化
(1) 公的サービスのオンライン経由での提供を促す。
(2) 電子カルテを普及させる全てのEU市民が電子医療記録にアクセス可能に
(3) 80%のEU市民がデジタルIDを利用
デジタルを社会の隅々まで普及し、社会・経済改革の手段として徹底的に活用するための戦略目標が示されている。
いずれも現状値とともに具体的な目標が設定されている。
https://ec.europa.eu/info/sites/info/files/communication-digital-compass-2030_en.pdf
EUのデジタル化に向けた方針に比べて、日本政府の取り組みは周回遅れだ。
デジタル庁の創設は決まったが、これも9月にやっと組織が出来上がる。
その組織の中で今後の方針が揉まれて日の目を見るのは多分来年あたり。
具体的な活動が始まるのは22年度からということになりそうだ。