自動車メーカーはEVへの転換と同時に、
工場でのCO2排出量ゼロを目指して鎬を削っている。
工場でのCO2排出量ゼロは熱源を再生エネルギーに変えるだけでは達成時期を短縮できない。
加工工程での熱消費量の削減が不可欠だ。
こうした流れを受け、自動車会社が素材メーカーと連携する動きが広がっている。
7月23日の日経新聞朝刊は、
「車部品、新素材でCO2減」と題する記事を掲載した。
「化学や鉄鋼各社が自動車生産時の二酸化炭素(CO2)を減らす素材技術の開発に力を入れている。
旭化成はCO2を最大で1割減らせる塗料材料を2026年にも量産する。
JFEスチールは車体成型時のCO2を抑える鋼材の加工技術を実用化した。
自動車産業の課題である脱炭素を素材の面から後押しする」。
いずれのケースも塗装や鋼材のプレスなどの加工工程での高熱による処理をより低い温度で可能にする技術開発を実現した。
旭化成の新素材塗料は塗装工程の温度を140℃から80℃へと下げられる。
JFEの新素材鋼板はプレス工程の温度を900℃から常温に引き下げることに成功した。
低温で加工することが可能になったことで、エネルギー消費を大幅に削減することが可能になった。
ところでEUは2035年に内燃機関車の販売を禁止する方針を決定した。
これに対応して自動車メーカーのEVシフトと、
工場のCO2排出量ゼロへの動きが本格化している。
独フォルクスワーゲン(VW)傘下のポルシェは、
ドイツの工場でCO2排出量の実質ゼロを達成した。
独ダイムラーも高級車メルセデス・ベンツの工場の排出量を、
22年から実質ゼロにする目標を掲げる。
これに比べて日本の対応は遅れている。
トヨタ自動車は全世界の工場でCO2排出量を実質ゼロとする時期を、
50年から35年に前倒しする。
日本の自動車メーカーのEV化はまだ周回遅れを脱していないようだ。