ダイヤモンド・オンラインの編集委員竹田氏は、
日本が20年間もの間賃金の上がらない国になってしまったと報告している。
https://diamond.jp/articles/-/278127?page=2
「OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の平均賃金(年間)は2000年時点、3万8364ドル(約422万円)で加盟35カ国中17位だった。20年には3万8514ドル(約423万円)と金額はわずかに上がったものの、22位にまで順位を下げた。過去20年間の上昇率は0.4%にすぎず、ほとんど『昇給ゼロ』状態。これでは『給料が上がらない』と悩む日本人が多いのも当然だろう」。
トップの米国の平均賃金は6万9391ドル(約763万円)で、日本は率にして44%の大差が開いている。OECD加盟35カ国の平均額の4万9165ドル(約540万円)に対しても22%低い。
なんと日本の平均賃金は19位の韓国に比べてさえ、3445ドル(約37万9000円)低い。
下図は、日米欧主要7カ国と韓国の平均賃金の推移を過去20年間で見たものだ。韓国だけでなく、米国やカナダ、ドイツなども賃金は顕著な右肩上がりで伸びている。「昇給ゼロ」状態なのは日本とイタリア(マイナス0.4%)だけである。
日本はなぜ賃金の安い国になってしまったのか?
竹田氏の分析によれば原因は以下の4つ。
1. 景気後退期に賃金調整に比べて雇用調整のタイミングを遅らせる日本の労使のビヘイビアが景気回復期にも継続した
2. 労働組合の弱体化によって経営者に対する賃金の継続的引き上げのプレッシャーが弱くなった
3. 雇用の流動性が進展せず労働市場での労働価格の決定力が今だに弱い
4. 賃金伸び悩み→個人消費伸び悩み→企業業績伸び悩み→賃金伸び悩みの悪循環
賃金上昇の伸び悩みをこれだけで説明するには十分ではない。
さらに追加すれば以下の要因も考慮に入れなければならない。
1. 不況期の雇用調整の圧力弁として非正規労働の雇用が急拡大した
2. 株主第一を求めるガバナンス改革によって配当の増加などの株主への分配額が拡大した
3. 経済のグローバル化による成長途上国からの低価格輸入品との競争に引きづられて賃金が据え置かれた
4. 消費税の増加と継続的円安傾向が購買力を押し下げ実質賃金の低下に繋がった
20年間日本のGDPもほぼ横ばいのままだ。つまり国民経済規模で付加価値額は増加していない。
しかし付加価値の配分において金融資産に関わる所得と企業の内部留保が拡大し、賃金所得の縮小が進行した。
つまりは付加価値額が増大しないまま富裕層と大企業への配分が継続的に増加し、
実質賃金所得への配分が抑制されてきたことに根本要因を見ることができる。
しかも大企業に蓄積された内部留保は有効に投資に向かうことなくいたずらに蓄積されたままだ。
二つの打開策が講じられるべきだ。
1. 消費税を廃止し、法人税と富裕層向けの増税を実行すること。消費税の廃止は実質賃金の増加を実現し、個人消費拡大→企業収益拡大→賃金上昇→消費拡大の好循環を生み出す
2. 企業の内部留保をグリーンとデジタルのとタンスフォーメーションのための積極的な投資に向かわせる。これによって衰退する日本の経済構造の大転換を起動させるトリガーが引かれることになる。