日経新聞は4日付け朝刊で、「円安が安い日本を生む」と題する記事を掲載した。
「日本経済にとって円安はプラスなのか。
日本経済研究センターが15年の産業連関表などから分析したところ、
デメリットの方が大きい。
『外貨建てで輸出する商品の円換算額が増え、売上高が膨らむプラス効果』と、
『輸入品が値上がりしコストが増えるマイナス効果』を比べると、
対ドルで10%の円安になった場合、
国内生産額比で0.5%デメリットが上回る」。
これまでは円高は輸出企業に打撃を与えることから、
円高=株安という図式が信じられてきた。
しかも輸出で稼ぐ日本企業はより安い人件費を求めて、
あるいは為替変動の影響を最小化するために、
さらには物流費の極小化を求めて海外に工場を移転してきた。
工場の海外移転は、
円安による売上高の嵩上げ効果を更に奪うことになっている。
しかしアベノミクス以降の政府の経済政策は、
円安=株高を一途に追い求め、
「異次元の金融緩和」を演出してきた。
ひたすら円安に固執した結果何が生じたか。
1. 企業による競争優位の創出策が、提供価値の継続的革新ではなく、円安による低価格に依拠することになった
2. 低価格依存の競争優位策は人件費の削減を求めることにもなり、非正規雇用の拡大とベースアップの終焉を迎えることになった。
(1) 「経済協力開発機構(OECD)によると、
主要国の平均年収は00年以降1~4割上昇し、
日本だけが横ばい。
(2) ドル建ての賃金水準は韓国より1割近く低い」。
もはや賃金水準は新興国並みに。
(3) 賃金の伸び悩みに社会保険料の増額、
消費税増税、さらには円安による輸入食品、
エネルギー価格の上昇が加わり、
日本人の購買力は落ちて、貧しくなった。
かくして「貿易量や物価水準を基に総合力を算出する円の『実質実効レート』は、
ニクソン・ショックからピークの95年まで2.6倍になった。
その後は5割低下し、
73年の水準に逆戻りしてしまった。
円の弱体化は世界の中での日本経済の地盤沈下をそのまま映し出している」。
日本をひたすら貧しい国に引きずり込んでしまった、
アベノミクスの罪は極めて大きい。