地球温暖化がヒトの対病原体抵抗力を無力化する
地球温暖化による気温上昇は気候変動だけでなく、ヒトに対する病原体の多様化というリスクをもたらす。(9月5日日経新聞)
「ヒトをはじめとする哺乳類や鳥類などは、一定の体温を維持して自然界にいる病原体から身を守っている。
体温は皮膚や免疫反応と並ぶ防御の盾だ」。
つまりヒトにとって害をなす微生物やウイルスの増殖温度帯は、ヒトの体温より低い。
ところが地球温暖化が進むにつれて、ヒトの体温を超える温度帯で増殖する能力をもつ病原体が出現し始めている。
つまり温暖化で暑い日々が当たり前になれば体温による対病原体防御機能は弱体化していく。
「最悪のシナリオはこうだ。
高温で生き残った『耐熱性』の病原体は、苦手としていたヒトの体温をやりすごせる。
今はヒトの体温よりも低い温度の爬虫(はちゅう)類や昆虫などの体にいる病原体も、
ヒトの体にやすやすと乗り移れるようになる」。
米ジョンズ・ホプキンス大学のアルトゥーロ・カサデバル博士はいう。
「このままでは人類が危うい。
微生物やウイルスは世代交代が速く、温暖化とともに高温に合うように進化しやすい。
同じようにヒトの体温が急速に上がるとは思えない」
地球温暖化による病原体の多様化は、高温に対応する病原体の増加だけではない。
シベリアの永久凍土の溶解によって、凍結していた未知の病原体が活性化してヒトを襲うことが危惧されている。
COVID-19によるパンデミックだけでも人類は世界中で大きな被害を蒙っている。
地球温暖化によって同様の破壊力を持った病原体が多数出現するとしたら、人類の持続可能性は今考えられているより速いスピードで失われることになるかもしれない。