以下のブログは日経新聞9月21日の「オピニオン」をもとにした論考となります。
格差是正を求めて失業率を下げることを目指した米国FRBの金融政策が、予想を上回る物価上昇を招いている。
結果として皮肉にも中間層以下の貧困化に繋がり格差は是正されるどころか拡大しつつある。
この現象を「スクリューフレーション」という。
「中間層の貧困化を指す『スクリューイング(Screwing)』と『インフレーション(Inflation)』を組み合わせた造語だ」。
「失業率は5%台に低下したものの、コロナ禍前の3%台半ばはまだ遠い。一方でインフレ率は1%から5%台に跳ね上がり、インフレ制御の是非を問われる事態になった」。
物価上昇が実質賃金の低下につながり中間層以下の購買力を損ね、格差をより拡大している。
「高い伸びが続く米消費者物価指数の内訳をみると、中古車やガソリンの押し上げが目立つ。車社会の米国では中低所得層の懐を直撃する。値上げの動きは食料品や家具・寝具など、生活に身近な品目で広がりをみせる。多くは新型コロナウイルス禍での供給制約や国際商品相場の上昇が背景にあるが、そうした理由では説明しにくい家賃や授業料の上昇率が再び高まり始めているのも気がかりだ」。
物価上昇の要因はこればかりでなく、FRBの金融引き締めの動きが金利の上昇を招き、これが引き金になって物価上昇の傾向が促されていることも考慮に入れなければならない。
ところで日銀もデフレ脱却を旗印にこの10年低金利政策による超金融緩和策を継続して来た。
しかし物価は一向に上向きに向かわず、賃金も全く据え置かれたままだ。
緩和マネーは株式と不動産に流れ込み資産家だけが雪だるま式に資産を傍聴させ、格差の拡大が進行した。
結果として消費は拡大せず、経済成長は停滞を続けた。
このような状況に加え新型コロナウイルス禍が新たな局面を開きつつある。
米国同様、国際商品の価格上昇と供給制約による物価上昇の兆しが見え始めているのだ。
しかも日銀は金融緩和策の解除の方向を探ることもしていないので、すでに金利引き上げの時期を探り始めているFRBとの政策ギャップから、今後は一層の円安に向かうことが想定される。
となると輸入に依存するエネルギー資源、食品など消費財は円安によってさらなる価格上昇をまぬがれ得ることはできない。
輸入消費財の価格上昇によるインフレが日本の中間層以下を襲う。
賃金の上昇も望めない状況で実質賃金が大きく引き下げられ、格差の拡大が進行する。
かくして日本経済はスタグフレーションの中でのスクリューフレーションで中間層の崩壊現象に一気に加速することになりそうだ。