低賃金だから物価が上がらない
日経新聞は11月12日に「値上げできない日本 鈍い賃上げ、円安で貧しく」と題する記事が掲載された。
企業の出荷価格は上昇しているのに、消費者物価に転嫁できず、企業の収益構造が脆弱化しているのだ。
根本原因は何か?
賃金が上がらない→需要が弱い→企業物価上昇を最終消費者価格に転嫁できない→利益が伸びない→賃金も上げられない、という悪循環が続いている、これが根本原因だ。
実態を見てみよう。
企業物価指数は10月に前年同月比8.0%と40年ぶりの上昇率に達した。
ところが消費者物価の上昇率は0%台。
そして4~6月期の個人消費は2年前より5%減少した。
また過去30年の名目賃金は日本ではわずか4%増加でしかなかった。
可処分所得で見ても、世帯人数2人以上の勤労者世帯で20年間に5%(月額2万4000円強)しか増えていない。
同じ期間に社会保険料は35%(月額約1万7000円)増えた。膨らみ続ける社会保障費が家計を圧迫している。
米国は物価上昇→金融緩和から離脱へ
米国の動向と比較してみよう?
米国では企業物価を追いかけるように消費者物価が30年ぶりの6%台になった。
そして過去30年の名目賃金は米国では2.6倍に達した。
結果的に7~9月の個人消費はコロナ禍前の19年7~9月と比べて10%増えた。
消費者物価の上昇を前提に米国は金融緩和政策の見直しに梶を切りつつある、
この先にあるのは低金利政策からの離脱だ。
日本は円安でさらなる消費減少へ
ところが消費者物価の上がらない日本は低金利政策を継続せざるを得ない。
そして彼我の金利差は円安を導く。
そして円安は輸入物価の上昇に直結する。
コロナ禍にあって輸入物価指数はすでに前年比で4割高い。
これに円安が加わると、輸入物価はさらなる上昇をもたらす。
エネルギーと食料を輸入に依存している日本にとって円安は個人消費にさらに大きくマイナスの影響を及ぼす。
当面の日本のデフレ脱却は低賃金と円安がの高い障壁となって立ちふさがり、出口は一層困難を増すことになる