日経新聞2月28日に「セブン、ヨーカ堂を守れるか」と題する中村編集委員によるコラムが掲載されている。
「セブン&アイ・ホールディングスが投資ファンドから、百貨店のそごう・西武に続き、イトーヨーカ堂の売却を求められている。セブン&アイは約2兆3千億円を投じた米国でのM&A(合併・買収)を実施し、コンビニ優先戦略にかじを切った。果たして20年以上の停滞が続く総合スーパーを防衛できるのか」。
7&iホールディングスの首脳陣は、次のような論拠で物言う株主の意向に抵抗しているように見える。
「約8万品の品ぞろえを持ち、1日当たり140万~150万人が来店する顧客資産を生かし、成長力が見込める食とデジタル戦略の相乗効果に最後の期待を寄せることが可能だ」。
中村氏はヨーカ堂の売却に反対の立場に立つ。そして法政大学の矢作敏行名誉教授の説を引用して、売却反対の自説を補強している。
「矢作氏は『世界の小売業の趨勢を見ても、店舗とデジタルを一体化した企業に変身することが不可欠。今後は店舗の価値が高まる』と指摘する。店は売り場という役割だけでなく、商品の注文受け付けや物流などを手がける拠点として不可欠と見るからだ」。
矢作氏の説は流通業の将来は店舗とECの融合によるバーチャル&リアル・ストアへの大転換にかかっていると見ている。
とはいえヨーカ堂を現状のままにして大転換がはかれるとも思えない。
バーチャル&リアル・ストアへの大転換はどのように可能か?
むしろ店舗とECの一体化はセブンイレブンの店舗群を活用することによって可能になるのではないか。ECの競争優位は物流力によって決まる。それもラスト・ワンマイルと言われる顧客への最終配送力だ。
ラスト・ワンマイルに店舗を構えるコンビニはこの点においてもヨーカ堂に比して強力な優位性を持つ。しかもその拠点数の圧倒的な多さがモノを言う形になる。
となるとヨーカ堂はEC業態にあっての競争力は集客力とマーチャンダイジングの優位性に頼るほかはない。
ヨーカ堂はこれまでなんども業革の嵐による再建のメスが入れられてきた。セブンイレブンの成功体験を引っさげて鈴木敏文氏が先頭に立っての改革も、ヨーカ堂の再建を実現できなかった。
むしろ成功体験が赫赫たるものであったが故に失敗に終わったのだとも言える。
つまりセブンイレブンが好調を維持する限り、ヨーカ堂の再建は不可能だと言うことなのだ。
とすればヨーカ堂を抱え続けるとするならば、重い切った業態転換が必要となる。
ヨーカ堂を総合スーパーから食品スーパーへと業態転換する道だ。
食品領域でセブンイレブンが構築し、成果をあげ続けているビジネスモデルは、ユニクロやニトリと同様の製造小売業と言う業態に近い。おにぎり、弁当、焼きたてパン、惣菜などを製造する専業ベンダーと運命共同体の関係をつくりあげ、一体となってマーチャンダイジングとSCMを運営する形での製造小売業だ。
食品スーパーではセブンイレブンのこの製造小売りのビジネスモデルは活かされるはずだ。
食品以外の領域はそれこそ場所貸し業に専念し、ユニクロ、ニトリ、イケア、東急ハンズ、MUJIなどを誘致すれば良い。
そしてこれらの分野でのこれまでのマーチャンダイジングの知財はECで活用することができるはずだ。
ヨーカ堂をグループ内に残して活用するのならこうした活用法が唯一残された道ではないだようか。