COVID-19によるパンデミックは働き方を大きく変えた。リモート勤務が常態化したことだ。
従業員はリモート勤務を経験して、その時間と場所の制約から自由な働き方に魅了され、もはや手放しがたい勤務形態になっている。
しかしパンデミックが収束を迎えて、企業は規律と協働を求める観点からリモート勤務に制限を求め始めている。従来の在社勤務に全面的に戻ることは無理としても、リモートと在社の両立を目指しつつある。
このハイブリッド型の勤務形態こそがこれからの主流となって行くだろう。
ではハイブリッド型勤務形態の成功要因(Key Success Factor)は何だろう。
Harvard Business Review Online 6月30日号に掲載された
がこの疑問に答えている。
ハイブリッド型勤務はなぜ求められるのか
従業員はリモート勤務によって働く時間と場所の制約から自由な働き方を手に入れた。リモートであれば在宅に限らず好きな時間に好きな場所での働くことができる。
企業にとってもリモート勤務は従業員の仕事に向かう自律性を拡充し、しかもそのことが生産性を高めることに気づき始めている。
一方リモートワークによって希薄化されてしまうのが組織に対する帰属意識とそれに基づく協働の効果だ。
この二つのコンフリクトを解消するために企業はハイブリッド型の勤務形態を求め、それが今や大きな流れになろうとしている。
しかし企業はオフィスワークに従業員をやみくもに引き戻すだけでは従業員が積極的にハイブリッド型に帰還する状況を作ることはできない。
その前にやることが三つある。
ハイブリッド型勤務形態の成功要因
しかしハイブリッド型勤務形態を成功に導く要因があるはずだ。HBRの論文では三つ提示されている。基本的には何よりも従業員がオッフィスワークを積極的に選択したくなるように、オフィスのリモートワーク環境を整える投資を実行することだ。
1. いかなる場所でも音と視覚のプライバシーを考慮することだ。
「筆者らのデータでは、従業員が好むのは視覚のプライバシー(39%)よりも、音のプライバシー(61%)がある場所だ。つまり、仕事場の外にいる人が見える、または外から見られる場所よりも、外の声が聞こえない、または外から聞かれない場所での仕事を好む」。
2. プロフェッショナル用オーディオ機器の提供
「筆者らのデータでは、一般消費者向けのオーディオ機器や、ノートPC内蔵のマイクとスピーカーを使う人に比べ、プロフェッショナル用のオーディオ機器を使う人は、バーチャル会議で自分が受け入れられている感覚がより強いと答えている。
実際にプロ用ヘッドセットの使用者は、一般向けの機器や内臓オーディオの使用者に比べ、バーチャル会議の会話で疎外感を感じる割合が11%低い。さらに、会議中に言葉が聞き取れない人の割合は、プロ用ヘッドセットの使用者は内臓オーディオの使用者より14%低く、一般向け機器の使用者より12%低い」。
3. 企業の従業員に対する職務遂行能力への信頼
「企業は、従業員に働く場所と時間を選ぶ自由を与えることで、彼らの職務遂行能力を信頼しているというメッセージを送ることになる。その信頼は、かなりの高確率でリーダーとチームに還元され、インクルージョンと帰属感に富む、結束の固い企業文化の構築につながることをデータが示している」。
リモート勤務形態の魅力を知ってしまった従業員を再びオフィスに迎え入れるには、オフィス環境をハイブリッド型へと高度化する必要があるということだ。
ハイブリッド型オフィスはここで述べたことは最低条件であるだろう。
さらなる進化が始まりつつあるということのようだ。