スイス・ローザンヌに拠点を置くビジネススクール・国際経営開発研究所 (IMD) が2023年の「世界競争力ランキング」を発表した。
「世界競争力ランキング」は2022年の63カ国に新たにクウェートを加えた世界64カ国を対象に、「企業がビジネスでどれだけ競争力を発揮しやすい環境が整っているか」を順位付けした調査だ。
この調査は、IMDが57の提携機関とともに収集した164の統計データと、6400人の世界の上級経営陣から寄せられた92の質問に対する回答をもとに、『経済状況(パフォーマンス)』『政府の効率性』『ビジネスの効率性』『インフラ』の4つの指標について、合計336の項目に基づき評価されている」。
以下に『株式会社やまとごころ』のwebページ(https://yamatogokoro.jp/inbound_data/50650/)に掲載された記事を参考にして「世界競争力ランキング」の実態を確認してみたい。
さて20位までのランキングは次の通りだ。
1位から3位に入った上位3カ国の詳細
「1位のデンマークは、「ビジネスの効率性」で1位、「インフラ」で2位を獲得。「政府の効率性」の順位も、6位から5位へとわずかながら上昇した。
2位のアイルランドは、「経済状況」の指標で、昨年の7位から1位へと大きく順位を上げたことや、「政府の効率性」「ビジネスの効率性」が昨年の11位から3位へと上昇したことで、全体の順位も11位から2位へと急躍進した。
スイスが3位を維持したのも、デンマークと同様、すべての指標についてよい結果を出しているためだ。なかでも「政府の効率性」と「インフラ」で、昨年に引き続き1位を堅持。「ビジネスの効率性」は昨年の4位から7位へと低下、「経済状況」は昨年の30位から18位へと上昇している」。
上位3カ国は共通して「政府の効率性」「インフラ」「企業の効率性」が際立った優位性を保持している。その背景としてDXの進展が圧倒的な効率性の要因として浮かび上がっている。
日本は35位
ところで日本は65カ国中の35位。しかも昨年よりワンランク落としている。この調査の開始から96年まではずっと5位以内を維持してきたが、97年以降順位が下がり続けての35位だ。
指標別の順位では、「経済状況」が26位(前年は20位)、「政府の効率性」が42位(同39位)、「ビジネスの効率性」が47位(同51位)、「インフラ」が23位(同22位)という結果だった。
30年続く不況が競争力低下の背景として作用し、それに輪をかける形でDX化の遅れが競争力の足を引っ張る形が浮かび上がる。
30年競争力の低下の要因は円安政策
一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏によれば日本の競争力の対価の根本要因は円安政策に求められる(https://diamond.jp/articles/-/326703)。
円安政策の端緒が96年であり、その後一貫として円安政策が続いたことと、競争力の低下が96年以降顕著に進行したということが符合することからもこの因果関係は納得できる。
円安政策の目的は戦後の高度経済成長を支えた輸出立国政策の延長上で理解できる。92年のバブル崩壊後のデフレ局面からの離脱を輸出の拡大によって実現しようとする意図のもとで円安誘導が現実化したのだ。
しかしこの円安政策は日本の輸出産業にとってはさしたる企業努力をしないでも売上高が拡大し、利益が増加するというぬるま湯環境を用意してしまった。この輸出企業にとって「最適」な湯加減の中で輸出企業は本来的な競争力の源泉となるイノベーションを怠るという致命的なリスクを犯し続けることになった。
競争力低下に輪をかけたDXの遅れ
円安政策による競争力の低下に輪をかけたのがDXの遅れであった。ビジネス領域でのDXの遅れはビジネスの効率性を阻害するとともにデジタル技術を活用しての新基軸の価値創造というイノベーションの阻害要因ともなった。
また中央政府ならびに自治体領域でのDXの遅れはより顕著であって、それがビジネス領域の効率化を加速的に阻害する要因ともなった、
今後競争力の増大に加速度をつけることが要請されている。そのためにはまず持って円安政策からの離脱が不可欠となる。円安政策からの離脱が企業環境をぬるま湯状況から、厳しい競争世界へと転換させることになる。いわば茹でガエル状況からの離脱だ。
厳しい環境の中で企業は必死になってデジタル技術を活用し、新規製品、新サービス、新素材、新市場、新技術を生み出すイノベーションエを次々に創生する道を拓いていくようになるはずだ。