Wall Street Journalは直近の2年間、日米株価が謎の連動をしていると報じている。図1は現地通貨建ての直近2年間の株価の推移だ。日本の株価は23年に入って急上昇している。それに対して米国株価はほぼ低迷状況にある。
日本では日米金利差が拡大することで円安が継続し、輸出企業を中心に業績が伸長したことが株価上昇のエンジンになっている。さらにこの金利差が円キャリー取引を生み外国投資マネーが日本株市場に流入して株価を押し上げている。
しかし日本株の動きをドル建で見たときに様相は一変する。図2に見られるようになんとまるで申し合わせたかのように一心同体の動きをしているではないか。
図1 現地通貨建ての株価推移
図2 ドル建ての株価推移
なぜこのような不思議な状況が生じ、しかもそれが2年も連続しているのか。
WSJの解説では二つの理由が挙げられている。
「もしかすると、インデックス取引のトレーダーや先物トレーダーが個別銘柄を無視して大金を投じていることが原因であり、ストックピッカー(銘柄選別者)に絶好の機会がもたらされているのかもしれない。しかし、これを証明することは不可能だ。もう一つの説は『全くの偶然』というもので、投資の根拠としては厳しい」。
偶然説はおくとして、トレーダーが個別銘柄を無視して大金を投じているとしても、それが日本株価と米国株価との連動要因になるには、日本株価が米国株インデックスに準拠して連動することが前提になる。つまりトレーダーは米国株インデックスに連動して日本株も動くと考えて取引しているということになる。
ということは日本の株価は日本の経済ファンダメンタルズにかかわらず、米国の経済ファンダメンタルズを反映した動きをするという前提が日米のトレーダーに共有されているということだ
つまり日本経済はもはや自律的な主体ではなく限りなく米国経済に包摂されてしまっているという実態が日米株価の同体化によって可視化されているのかもしれない。